オランダ世論調査(2022年9月):オランダでの王政継続を支持するのは51%まで低下。18歳~54歳では43%

 (オランダ語)Peiling Ipsos: slechts 51 procent van Nederland steunt monarchie

 

 オランダでの王政継続を支持するのは 51% まで低下し、 18 歳~ 54 歳では 43% であると、オランダの公営放送 NOS が報じています。
 この世論調査は共和政支持者団体が、イプソス(Ipsos)という有名な調査会社に委託したものらしく、依頼元はともかくとしても数値は信頼できるでしょう。

 

 記事によれば今年(2022年)の春には支持は 58% であり、低下の原因はわかりませんが、調査元の共和政支持者団体は、調査日について、予算関連の日に近く、王室予算について意識された(ことがマイナスにつながった)のではないかという指摘をしています。
(つまり、特に問題が起きなければ、次の世論調査ではわずかに上がるのは確実だろうと思います)

 

 また(いまさら意図がよくわからない設問ですが)、君主の長子が自動的に次の君主となるという、継承法についての支持が、 51% だったものが 47% に低下しています。
 これについては「ではなにを望むのか」という回答がない限り判断しようがなく、また、誤差とみてもいいレベルではないかという気もします。
 個人的には気にしていません。

 

 一方、共和政への支持は 24% から 26% への増加にとどまっており、これも誤差の範囲でしょう。
 つまり 25% 程度の人は、「どちらでもない」類の回答をしていることになりますが、その具体的な表現はわかりません。
 (なお、高齢層でも共和制支持がわずかずつ高まってきているというのは近年指摘されています)

 もし共和政になった場合にどのような政体を取るかですが、
  32% が、特に意見はなし
  30% が、ドイツ連邦共和国のような儀礼的大統領
  20% が、大統領のいない共和国(スイス連邦のような、と書かれていますが、スイスにも大統領はいます。ただローテーション制の特殊なものであるのと、国家元首としての規定がありません。外交上、他国の国家元首と同等になる機会は多々ありますが)
  17% が、アメリカ合衆国のような実権を持った大統領
 と回答しています。

 

 オランダの王政支持は、かつては 90% 近くあり、2020年でも 75% 程度あったのですが、
 国民に厳しい新型コロナウイルス【COVID-19】対策を課す中、
 オランダ王ウィレム=アレクサンダー陛下がギリシャで秋の休暇開始→激しい反発で数時間で帰国発表(2020年10月)
 という事件があったのが低下の主原因はないかと思われています。
 とはいえ、ゆるやかな長期的低下にあったことも事実ですし、 COVID-19 から現在のインフレまで社会が大きく揺らいでいるという事情もあるでしょう。

 

 継承法を男女の性別を問わない絶対長幼制にし、王室自体の人数を減らすことによって予算とスキャンダルを減らす、という方針は、ある程度は欧州の(モナコとリヒテンシュタインは除く)君主国にとっての共通方針になりつつあります(スペインは絶対長幼制ではありませんが)。

 しかし、これは成功の秘訣といえるほどのものでもありません。他にもう案がないという現実もあります。

 また、
 オランダ王室のオランニェ女公(オランダ皇太子)カタリナ=アマリア王女殿下が、警備上の理由から学生寮を離れた模様(2022年10月)
 という出来事がありました(世論調査はこれより前)。
 継嗣に対して、攻撃的な行動が(ソーシャルメディアを含め)継続的におこなわれており、同王女を守ることができていない状況です。

オランダ王室のオランニェ女公(オランダ皇太子)カタリナ=アマリア王女殿下が、警備上の理由から学生寮を離れた模様(2022年10月)

 先月(2022年9月)からアムステルダムの大学の学生となって学生寮で生活していたオランニェ女公【オランダ皇太子】カタリナ=アマリア王女殿下(オランダ王女: オランニェ=ナッサウ公女 : Catharina-Amalia : Her Royal Highness The Princess of Orange, Princess of the Netherlands, Princess of Orange-Nassau)が、警備上の理由(犯罪組織からの襲撃や誘拐の恐れ)から学生寮を離れたようです。

 スウェーデン王国訪問中にオランダ王ウィレム=アレクサンダー陛下(Willem-Alexander : His Majesty The King of the Netherlands)とオランダ王妃マクシマ陛下(Her Majesty Queen Máxima of the Netherlands)がこの件についてコメントしており、また、オランダ王国首相マルク・ルッテ閣下(His Excellency Mr Mark Rutte)や司法・治安を担当する大臣も強い懸念を表明しているようです。

 アムステルダムに一人で居住するのも不可能だろうということになり、デン・ハーグの王宮に戻っているようですが、そこから通学するのか、今後のことについてはわかりません(追記:現在は通学しているという報道があります)。

 

 (英語)Princess Amalia: Dutch royal moved from student home after security threats | Euronews

euronews:
Princess Amalia: Dutch royal moved from student home after security threats – YouTube

 

RoyalTV by Rick Evers:
Máxima en WA over bedreigingen Amalia – YouTube

 

追記(2022年11月17日):
 なぜか欧州での報道から一ヶ月経過してから ANN NEWS が報道。

ANNnewsCH(ANN NEWS):
オランダ王女がマフィアの標的に?“誘拐・襲撃の危機”で大騒動(2022年11月17日) – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=kfazBxOtiTc

 なお、最新のオランダ世論調査は、
 オランダ世論調査(2022年9月):オランダでの王政継続を支持するのは51%まで低下。18歳~54歳では43%

アルゼンチンの君主政運動(極小勢力)が、オランダ王女アレクシア殿下かアリアーヌ殿下をアルゼンチン女王に推戴したい模様(2021年4月)オランダ王妃マクシマ陛下がアルゼンチン出身のため

 アルゼンチン共和国のアルゼンチン君主政運動(Movimiento Monárquico Argentino : MMA)という極小勢力の方々が、アルゼンチン出身であるオランダ王妃マクシマ陛下(Máxima : Her Majesty the Queen of the Netherlands)(とオランダ王ウィレム=アレクサンダー陛下)の次女/オランダ王女アレクシア殿下(オランニェ=ナッサウ公女 : Her Royal Highness Princess Alexia of the Netherlands, Princess of Orange-Nassau)か三女/オランダ王女アリアーヌ殿下(オランニェ=ナッサウ公女 : Her Royal Highness Princess Ariane of the Netherlands, Princess of Orange-Nassau)殿下をアルゼンチン女王に推戴したいらしいです。もちろん、長女はオランダを継いでね、ということでしょう。

 

 この運動のリーダーの方の主張は世界中でよくあるもので、君主が存在することによって政治家が牽制され、社会が安定するというタイプのもののようです。
 また、君主の予算も、現在、政治家が盗んでいっている金でまかなえるので心配するな、としています。

 記事中では Twitter などのフォロワー数まで記載されていますが、数百人です。
 しかし潜在的には数百人の君主政支持者がいると主張しています。う、うーん……??

 

 (スペイン語)Que la hija de Máxima sea reina de los argentinos, la propuesta para que el país deje el atraso y la corrupción

F.I.MO. Fórum Internacional MonárquicoさんはTwitterを使っています 「Los argentinos que proponen que una hija de Máxima sea “nuestra reina" @MonarquismoArg https://t.co/KXRxYsBuip」 / Twitter

 

 (スペイン語)Proponen que una hija de Máxima de Holanda sea coronada “reina de Argentina” – Radio Suquia

Radio SuquíaさんはTwitterを使っています 「¿Estarías a favor de que haya reyes en Argentina? ¿Quién debería llevar la corona? #Monarquia @MonarquismoArg https://t.co/pRuepc7gOR」 / Twitter

オランダ王ウィレム=アレクサンダー陛下夫妻およびベアトリクス前女王陛下(王女殿下)が、薨去した英国王室/エディンバラ公爵フィリップ王子殿下への弔意を表明(2021年4月)

 オランダ王ウィレム=アレクサンダー陛下(Willem-Alexander : His Majesty The King of the Netherlands)およびオランダ王妃マクシマ陛下(Máxima : Her Majesty the Queen of the Netherlands)、前オランダ女王ベアトリクス陛下(オランダ王女ベアトリクス殿下、オランニェ=ナッサウ公女、リッペ=ビースターフェルト公女 : Her Royal Highness Princess Beatrix of the Netherlands, Princess of Orange-Nassau, Princess of Lippe-Biesterfeld)は、薨去した英国王室/エディンバラ公爵フィリップ王子殿下(His Royal Highness The Prince Philip, Duke of Edinburgh)への弔意を表明しました。

 

 (英語:オランダ王室 公式サイト)Response by King Willem-Alexander, Queen Máxima and Princess Beatrix upon the death of Prince Philip | News item | Royal House of the Netherlands
 (オランダ語:オランダ王室 公式サイト)Reactie van Koning Willem-Alexander, Koningin Máxima en Prinses Beatrix op het overlijden van Prins Philip | Nieuwsbericht | Het Koninklijk Huis

 

Koninklijk HuisさんはTwitterを使っています 「Response by King Willem-Alexander, Queen Máxima and Princess Beatrix upon the death of Prince Philip. https://t.co/WKiwviYw4t https://t.co/wR2pVg0XuT」 / Twitter

 

Koninklijk HuisさんはTwitterを使っています 「Reactie van Koning Willem-Alexander, Koningin Máxima en Prinses Beatrix op het overlijden van Prins Philip. https://t.co/MaqUppMmxw https://t.co/ZsMZ5H5ExU」 / Twitter

 

Koninklijk Huis(@koninklijkhuis) • Instagram写真と動画

47NEWS の いい加減な記事「王位継承権より大事なもの、それが「愛」 オランダ王室の恋愛・結婚事情【世界から】」(2020年12月)

 いい加減な記事を見かけたのでリンクしておきます。

 

 王位継承権より大事なもの、それが「愛」 オランダ王室の恋愛・結婚事情【世界から】
URL: https://www.47news.jp/47reporters/5607122.html

 

 およそ日本語の欧州王室に関する記事は(のみならず書籍も)かなりの部分でいい加減ですが(その逆も)、しかしここまでいい加減なものが出るか……と呆れています。

(オランダ在住ジャーナリスト、共同通信特約=稲葉かおる)

 という人物が書いているらしいですが、共同通信がからんでいるのかなるほどと思う次第。

 そして、アホウなこと書いています。

 あくまでも冗談だが、「アマリア王女が将来、異性ではなく同性と結婚すると言い出したら、一体王家はどうなるのか?」というような、たわいもない話題で国民はあれこれと話し合うのが大好きだ。

 ちなみに、同性同士の婚姻はオランダで合法化されている。アマリア王女が「花嫁」を迎え入れることは可能である。「それでは王室の血統が途絶えるのでは?」と心配する声が上がりそうだが、心配はない。他の王家から養子を迎えるなどすればいいだけだ。アマリア王女は女王になった暁には、パートナーは王女という肩書を授与される結果に落ち着くだろう。

 あのですね、オランダには王位の継承法があり、王位継承順位というものがあります。ルールがあるわけです
 オランニェ女公カタリナ=アマリア王女殿下に子供がいなければ、妹のアレクシア王女殿下が継承することになります。
 なぜいきなり「他の王家から養子を迎えるなどすればいいだけだ。」などという戯言が出てくるのか。妹がいるんですよ? ルール上継承順位が次の順位になっている妹がいるんですよ? 知らないんですか? 「他の王家」ってどこです?
 それでなくても、オランダ人の専門家の一部は、歴代の女王がドイツ人を夫に迎えてきた最近のオランダ王室(オランニェ=ナッサウ家)に対して、政府が現在の王室をあきらめて(この間も失態がありましたねいっそドイツの(旧)王朝のどこかに新しい君主を要求する可能性(つまり「養子を迎えるなどすればいい」論を超えてクビにする論)を捨てていないと判断している、そしてその潜在的な案に反対している。オランニェ=ナッサウの家系の血を引かない人物の継承がオランダの伝統に関連しているとみなしていないからだ。この人は現在の王室の状況を知っているのか? 専門家の意見を知っているのか?

 「パートナーは王女という肩書を授与される結果に落ち着くだろう」というのも、大した根拠があると思えず、ド素人の世間話をいかにも実現しそうな記事にするという共同通信らしい無責任さはやめていただきたい。
 
 

 その次の、

ここで、他国の王室に婿入りしたオランダ人男性のエピソードを紹介しよう。マレーシアの王女と結婚した、デニス・フェルバース氏だ。

 は、そもそも話の内容が、さっぱりなく、なんのために挿入したのか。オランダ王室の話でもないし。
 原稿料の都合で文章を水増ししたのか。
 いや、そんなことはないはずですね。

 なお、デニス・フェルバース氏(Dennis Verbaas)というのは、ジョホール州スルタンの娘アミナー王女殿下(Her Highness Tunku Tun Aminah Maimunah Iskandariah)と結婚した人物です。結婚前にイスラムに改宗し、現在はデニス・ムハマド・アブドゥラ閣下(The Honourable Dato’ Dennis Muhammad Abdullah)と呼ばれるのが正式のようです。

 

 そして……

▽王位を掛けた恋

 一般女性への愛を貫き結婚し、王子のタイトルを放棄した人物もいる。アレクサンダー国王の弟、ヨハン・フリーゾ王子である。彼がオランダの一般女性、メイベル・ウィサスミットさんとの婚約を発表したとき、多くの国民が驚くとともに、落胆の声も上がった。

 記事タイトル・副題を思い出してください。
「王位継承権より大事なもの、それが「愛」 オランダ王室の恋愛・結婚事情」
 ここからですよようやく。記事のタイトルにあう話。
 今まではただの素人の世間話とオランダ王室の実際の話と関係ない話
 それに加え、この段の「王位を掛けた恋」という出だしはおおげさ
 この殿下が結婚する前年、兄に娘であるカタリナ=アマリア王女殿下が生まれ、王位を継承する見込みは大幅に薄まっていたのである。
 また、弟コンスタンティン王子殿下もいるため、実際のところ、抜けたとしてもそこまで王室にとっても痛手にならない状況だったのだ。
 もちろん、だからと言って、それは彼が王位を継ぐ可能性がなかったことを示すわけではないし、そもそも王室が想定していた構成員の役割について再考が迫られたことは事実です。
 しかしそれは「王位を掛けた」というほどのものでもない。
 また、「王子のタイトルを放棄した」とありますが、細かいことになりますが、同意なしに結婚したのと同時にオランダの王子の称号が自動的に失われるというルールなので、「私はこれを放棄する」と宣言して放棄したというのはちょっと違います。そして、またその後に、オランニェ=ナッサウ公子には叙されています。

 

 最後の段もいい加減です。

 もし、不幸にして議会や国民からの合意を素直に得られそうにない相手を選んだ場合は潔く王室を去る。これも、国民に支えられ、国の象徴として存在する王室メンバーとしての自覚があるがゆえの選択だろう。

 昔から国王(や後に議会)の許可を得られなかったら結婚の代わりに継承権と称号を手放すというのは欧州に広範囲によくあることだっただけで自覚でもなんでもないです(もちろんそう取りたいなら取ってもいいようなものでもありますけど)。
 最近にいたっては、相手の過去に問題があっても反対される可能性は少なく、許可を取らないのも単に手続きが面倒くさいというケースすらあります(しかも遡って後から許可をもらうことが出来る国もある)。ゆるゆるになっています。

 

 それにしても、おおげさなタイトルをぶち上げた割には、フリーゾ殿下の話しか当てはまるものはなし。「オランダ王室の恋愛・結婚事情」とは一件で代表させて良いものなのでしょうか。そうは思えないのですが……。
 これが「釣り」というものでしょうか。