南アフリカ伝統的君主:モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下を選出した王室評議会に対し、将来的に女王になると大統領らから認められていた妹のマサラナボ王女殿下の弁護士が提訴の意向(2021年5月)

 南アフリカ共和国のロベドゥ人の君主であるモジャジ(Modjadji)または雨の女王(Rain Queen)に、ロベドゥ王室評議会(Royal Council)がレクケラ・モジャジ王子殿下(His Royal Highness Prince Lekukela Modjadji)を選出した件、妹で雨の女王の後継として大統領・政府らにも認められていたマサラナボ王女殿下(Her Royal Highness Princess Masalanabo)の代理人の弁護士が王室評議会の決定を無効として提訴するそうです。

 伝統やらなんやらの話はともかくとしても、大統領や政府が認めたことを一方的に否定した王室評議会の決定は、「伝統的指導権と政府の間の枠組みに関する法律」に違反しているんじゃないかと思うので、王室評議会はあっさり負ける可能性もあると思います(ロベドゥ人の伝統がどうあれ、彼らは南アフリカ共和国のルールに従う義務があるというか、従わされます)。が、王室評議会のほうも弁護士がいるようなので、伝統以外のことで何か理論武装してくるのかもしれません。

 これでようやく争いが始まるわけですが、それはそれとしてほかにも注目することがあります。
 一つ目は、シリル・ラマポーザ大統領をはじめとする政府・政権・与党政治家らが直接動くのか、とりあえず訴訟を見守るのかということ。
 二つ目として、テボホ・モジャジ=ケカナ王女(Princess Dr Tebogo Modjadji-Kekana)と称している/呼ばれている人物は結局のところモジャジとは関係があるのかないのかという割と重要な問題が一つ。今、世に出ている雨の女王に関する情報のある程度は、この人やこの人の支持者から来ているのではと思われるフシがあるので、この人が信頼できない人物だとすると、王室評議会の主張以外の伝統や歴史(割と最近まで)に関する話はどこまで信頼できるのかという疑問がわきます。
 そのほか、ネット署名でマサラナボ女王支持を訴えていた人がいます。こちらはンコサザナ・クラリス・ドラミニ=ズマ共生・伝統担当大臣らに彼ら(か彼女らかわかりませんが)の要望を提出するという予定でしたが、せんだっての王室評議会の記者会見や、それに続く王女の代理人による提訴を受けて、予定を変えるかもしれません。

 

※なお、多忙のため、この話を最後まで追えるかわかりません。英語では普通に情報が出てくると思うので、ものすごく興味がある方は直接そちらはどうぞ。

 

 (英語)Modjadji queenship dispute heads to court

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

ウガンダ伝統的君主:ブグウェ首長位(?)について訴訟が起こされている模様(2021年5月)高等裁判所判事が同地出身のため交代を申し出る

 Daily Monitor によりますと、ブグウェ首長位(Bugwe chiefdom)について訴訟が起こっているようです。

 記事中では「king(王)」や「paramount chief(大首長)」などの語も同時に使われていて、記事を書いている人も、あるいは本人たちも自分たちの位の格について結構あいまいなのかもしれません。

 ともあれ、スライマン・ゴッドフリー・ワニアマ・マチェンベSulaiman Godfrey Wanyama Machembe)という人物が、自らが植民地前の最後の君主マイェロMayero)の直系子孫であるとし、首長としてフィリップ・ワニアマ・ハシバンテ・ナハアマPhillip Wanyama Hasibante Nahaama)が選ばれたのを誤りとしているようです。
 記事中からは、ブグウェ首長の地には複数の王家があるようにも取れますが……。
 なお、選出された首長は、職業能力開発センターで戴冠式をおこなったという疑い(?)もあるとしています。

 そのほか、高等裁判所の担当判事が、現地の出身であり利益相反の可能性があるとして交代を申し出たようです。

 

 (英語)Two fight over Bugwe chiefdom seat – Daily Monitor

Daily MonitorさんはTwitterを使っています 「Two fight over Bugwe chiefdom seat https://t.co/l0JLaOW9PU #MonitorUpdates」 / Twitter

記者会見動画:南アフリカ伝統的君主/ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下を選出した王室評議会の記者会見(2021年5月)おじで摂政のムパパトゥラ王子殿下らがコメント

 南アフリカ共和国のロベドゥ人の君主であるモジャジ(Modjadji)または雨の女王(Rain Queen)にレクケラ・モジャジ王子殿下(His Royal Highness Prince Lekukela Modjadji)を選出したロベドゥ王室評議会(Royal Council)が記者会見をおこないました。

 

追記:
 内容についての英語記事が出ています。
 (英語)Modjadji Royal Council on ascension to the throne that caused a rift

 

eNCA:
Modjadji Royal Council briefs the media – YouTube

※この動画サムネイル、結局のところ、左がマサラナボ王女で、右はムパパトゥラ王子ではないかと思われます。ただレクケラ王子の写真・映像をまだ見ていないので、似ているという可能性もあり、わかりません。レクケラ王子が今回の記者会見の場にいたかどうかもわかりません。

 

 8分ごろから席で話を始めているのが、摂政で、レクケラ王子およびマサラナボ王女のおじのムパパトゥラ王子殿下(ムパパトラ王子 : ムパパダ王子 : His Royal Highness Prince Regent Mpapatla【Mpapada】 Modjadji)。

 38分ごろから着席して話している水色の服の人物(既出の広報の人?)が誰かはよくわかりませんが、以下の話題を取り扱っています。
 まずは、テボホ・モジャジ=ケカナ王女(Princess Dr Tebogo Modjadji-Kekana)に関してですが、ロベドゥ人には四つの王家があるが、どれとも関係ない人物としています(モジャジを姓に持つ王族は三人しかないと言っているように聞こえますが……。過去に出ていた情報として、摂政に娘がいるという話があったのですが、上の王女の件も含めて何が本当やらよくわからなくなります)。
 次に、女王の子供に関する話ですが、誰も女王の子供の父親としての権利を主張できない(ロベドゥ人の伝統としては)という話をしています。
 最後に大統領に子供(マサラナボ王女)を地元に返してくれと要望したが対応してくれなかったなど、大統領や政府とのこれまでの関係などです(正直よくわからない話もあります)。
※マサラナボ王女は、父親側の親権要求などがあり、結局与党のマトール・モツェクガ議員(マトール・モチェハMathole Motshekga)が後見人として預かるような形になっています。
 そして、話が重なる形もありますが、モジャジは地元にいるべきという話と、王室のメンバーの話が再度出てきて(内容はよくわかりませんでした)、終わります。

 58分過ぎから出てきた人物が誰だかよくわからないのですが、一番重要人物そうではあります。
 摂政のムパパトゥラ王子の役割について話しており、一つ目は王室などを率いること、二つ目はレクケラ王子とマサラナボ王女を育てること、三つめは(よく聞こえなかったのですが)継承の準備をするということになるのでしょうか。

 

 要するに、まとめとしては、彼らはマサラナボ王女を地元に返してもらい女王にしたかったのだが、大統領と政府がそれを許さなかったので、大きな変更にはなるが残るただ一人の候補であるレクケラ王子を久方ぶりの男の王として継承者に決定したということになるでしょう(追記:この決定自体は2006年と主張されており、だとするとマサラナボ王女を女王にする計画はなかったのに“返還”を要求していたのか、彼らの要求が通っていたら女王にしたのかはよくわかりません)。
 今回最後に出てきた人物が見るからに一番偉いように思われるのですが、この人物が王室評議会議長(?)ということになるのでしょうか。
 摂政とこの人物のどちらかが決定の主導権を握っていたと思いますが……。

 

 さらに説明の記事と動画。

 (英語)Modjadji Royal House | WATCH | 'Rain Queen not ready for throne' | eNCA

eNCA:
Modjadji Royal House | 'Rain Queen not ready for throne' – YouTube

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

訃報(2021年4月3日):タウフィーク・アーディル・トゥスン王子殿下(1925~2021)エジプト、ムハンマド・アリー朝/サイード・パシャの玄孫(孫の孫)?

 2021年4月3日、タウフィーク・アーディル・トゥスン王子殿下(His Highness Prince Tewfik Adil Toussoun)が、アメリカ合衆国カリフォルニア州で薨去したようです。
 1925年4月18日生まれの95歳。

 オスマン帝国下でエジプト・スーダン総督を務めた、ムハンマド・アリー朝のサイード・パシャの玄孫(孫の孫)ではないかと思います。

 

 (英語)Prince Toussoun Obituary (2021) – La Quinta, CA – The Desert Sun

南アフリカ伝統的君主:モジャジ(雨の女王)継承問題にシニカル(?)なコメントの記事:「女王を女性の権利の代表者のように見るのは偽フェミニスト」「共和国政府が王の選出に口を出せるという発想自体が、植民地経営の白人と一緒」「“雨の女王”は誤訳で元の単語に女に限定する意味はない」(2021年5月)

 とまあ、表題で書いたようなことに加え、

「降雨儀式は君主だけでおこなうものではない(ので君主の性別はどっちでもいい)」

「オランダ古法ベースの法体系はロベドゥ人の世界観には関係ない。後継者は現地にいるべきものだ。摂政が(親権の問題で現地を離れている)王女を現地に戻すよう要求したのに政府が戻さなかったから彼らはこうするしかなかった」

 というような内容もあります。

 より詳細な内容は(英語ですが)元記事のリンクをたどっていただきたいと思います。

 

 (英語)SEABELA MAILA: The Modjadji lineage & the fetish for a romantic precolonial past

 

 英語の Rain Queen(雨の女王)という単語自体が混乱を招いている、と言っていいのでしょうか。

 それにしても、今回のレクケラ王子選出の動きの中心は、やはりというか、おじで摂政のバコマ・ムパパトゥラ・モジャジ王子(Prince Renget Bakhoma Mpapatla Modjadji)ということになるのでしょう。
 この記事の人や王室評議会の広報のコメントをあわせると、摂政がマサラナボ王女を現地に戻してくれと何度頼んでも戻してくれないので(王女は故・女王マコボ・モジャジ6世よそのひとの間に生まれた子供で、その人物が親権を主張し、結果、ANCの議員が預かるような形になっている)、ついにあきらめた摂政が王室評議会に兄のレクケラ王子を選出するようにはかり、そう決定されたので、発表した。そういう一連の流れが推察されます。

 ただ、それにしても、王室評議会には、去年まではマサラナボ王女支持派が存在していたようなので、その人物が亡くなったので実行し、押し切って全会一致で合意したとも取れます。
 これは上記の記事の人物の見方もまた一つの本質論にすぎず、現実の状況はさらに複雑であることを示しているのでしょう。

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事