ナイジェリア伝統的君主:カノ首長らが強制的に廃位される事態に陥り、現地は不安定化(2024年5月)

 2024年5月23日、ナイジェリア連邦共和国カノ州では、カノ首長アミヌ・アド・バイエロ殿下ら五人が廃位され、2020年にカノ首長を廃位されていた“アルハッジ”・ムハンマドゥ・サヌシ2世殿下(His Royal Highness Alhaji Muhammad Sanusi II, The Emir of Kano : サヌシ・ラミド・サヌシSanusi Lamido Sanusi)をあらためてカノ首長とするように結論が出たようです。
追記:
 連邦高等裁判所が復位の即位式を差し止める命令を出していた模様。また、司法判断がわかれており、誰が現時点で法的に正当なカノ首長であるかはわかりません

※裁判も絡んでややこしいですが、ムハンマドゥ・サヌシ2世殿下の復位と、以下5人の廃位が決まりました。

 カノ首長アミヌ・アド・バイエロ殿下
 ビチ首長ナシル・アド・バイエロ殿下
 ラノ首長カビル・ムハンマド・イヌワ殿下
 カライェ首長イブラヒム・アブバカル2世殿下
 ガヤ首長イブラヒム・アブドゥルカディル殿下
 (カノ首長以外は2019年に新設)

 現地は不安定化しており、またか……という感想です。
 カノ首長に関しては簡略化しますが、
  ムハンマドゥ・サヌシ1世廃位
  → (弟の)アド・バイエロ即位
  → アド・バイエロ崩御 
  → (1世の孫)ムハンマドゥ・サヌシ2世即位
  → ムハンマドゥ・サヌシ2世廃位
  → (アド・バイエロ次男)アミヌ・アド・バイエロ即位
  → アミヌ・アド・バイエロ廃位
  → ムハンマドゥ・サヌシ2世復位
 と、世代を超えて混乱の極みを続けたいのかという展開になっています。

 

 (英語)Sanusi reinstated as Emir of Kano four years after deposition
 (英語)Kano Emirate: Gov reinstates Sanusi after four-year deposition as Assembly sacks emirs
 (英語)Emirate tussle: Court orders Bayero’s eviction, Kano says deposed emir a threat

 (英語)Muhammadu Sanusi, Nigeria's emir of Kano, speaks out after return to throne

 

News Central TV:
The Deposed Emir of Kano, Aminu Ado Bayero, Ordered to Stop Parading as Emir – YouTube

 

州知事は殿下を逮捕するよう指示を出したという報道/
TVC News Nigeria:
Governor Yusuf Orders Arrest Of 15th Emir Of Kano, Ado Bayero – YouTube

記事(英語):ナイジェリアで最も強力な王たち トップ10(2022年9月)

 定期的に見かけるタイプの記事ですが、ナイジェリア連邦共和国で最も影響力のある伝統的君主を10人挙げています。

 

 (英語)Most Powerful Kings in Nigeria (With Pictures): Top 10 – Bscholarly

 

 10人は、

1. Alaafin of Oyo
2. Emir of Kano
3. Sultan of Sokoto
4. Ooni of Ile-Ife:
5. Dein of Agbor
6. Oba of Benin
7. Oba of Lagos
8. Obi of Onitsha
9. Olu of Warri
10. Olubadan of Ibadan

 となっており、

  1. オヨ王
  2. カノ首長
  3. ソコトのスルタン
  4. (イレ=)イフェ王
  5. アグボー王
  6. ベニン王
  7. ラゴス王
  8. オニチャ王
  9. ワリ王
  10. イバダン王

 いずれも記事などで動静がよく報じられる人物たちです(オヨ王は2022年4月に崩御し、空位)。

 1.のオヨ王と、4.のイフェ王は、ヨルバ系の二大君主です。歴史的にもあまり仲がよろしくありません。
 7.のラゴス王、10.のイバダン王もヨルバ系なので、このトップ10ではヨルバ系君主が4人ということになります。イバダン王は最近崩御があり、先代王と確執・騒動があった人物が新たに王となっています。

 2.のカノ首長は、北部イスラム圏ではナンバー2の君主です。
 大きな影響力を誇った先々代のアド・バイエロの薨去後、長男のサヌシ・アド・バイエロではなく、ムハンマド・サヌシ2世(ジョナサン大統領(当時)と対立した中央銀行総裁(当時))が政治的なバランスも考慮されて州知事から指名されていました。
 しかし結局、廃位され、アド・バイエロの次男(?)のアミヌ・アド・バイエロ(ビチ首長という新設の首長になっていた)が継承しています。ビチ首長自体は弟のナシル・アド・バイエロが継承。
 また先述のサヌシ・アド・バイエロは首長位につけておらず、弟の即位後に評議会のメンバーに選出されていますが、将来の継承に影響が出るのかどうかはわかりません。

 3.のソコトのスルタンは、北部イスラム圏でナンバー1の権威の君主です。
 ナイジェリアからのマッカ(メッカ)巡礼を率いる役割を毎年のように大統領から打診されていますが、これが伝統なのかどうかはよくわかりません。

 5.のアグボー王は、(Dein of Agbor)という称号を用いますが、州の伝統的君主の評議会がこの称号を取り消して他の君主らと同じようなものにしようとした結果、抗議活動が起こったりするなどの出来事がありました。

 6.ベニン王、8.オニチャ王に比べると、9.ワリ王の知名度は低かったように思いますが、昨年の戴冠式に大統領経験者やイフェ王の訪問があったり、関連してベニン王との歴史的つながりがあらためて示されたりということがありました。

結婚式(2021年8月20日):ナイジェリア伝統的君主/ビチ首長の娘ザハラ・ナシル・バイェロ王女と大統領の息子ユスフ・ブハリ氏。大統領、ジョナサン(元)大統領、イフェ王など多数の参列

 2021年8月20日、ナイジェリア連邦共和国カノ州の伝統的君主のひとりビチ首長“アルハッジ”・ナシル・アド・バイェロ殿下(His Royal Highness Alhaji Nasiru Ado Bayero, Emir of Bichi)の娘ザハラ・ナシル・バイェロ王女(Princess Zahra Nasir Bayero)と、ナイジェリア連邦共和国大統領ムハンマド・ブハリ閣下(His Excellency Muhammadu Buhari GCFR)の子息ユスフ・ブハリ氏(Yusuf Buhari)が結婚式を挙げました。

 ビチ首長の兄アミヌ・アド・バイェロ殿下は同共和国北部で二番目の権威といわれるカノ首長の地位にあります。

 現職大統領の一人息子と、北部の伝統的君主の娘の結婚ということで、多数の要人や伝統的君主が参列しています。

参列者(判明し次第追記します)/
新婦側:
 ビチ首長“アルハッジ”・ナシル・アド・バイェロ殿下
  (やや遠縁)ビチ首長らと対立し、金銭疑惑で他州へ逃亡していたはずのナイジェリア中央銀行の元総裁・前カノ首長“アルハッジ”・ムハンマド・サヌシ2世殿下(His Royal Highness Alhaji Muhammad Sanusi II, The Emir of Kano : サヌシ・ラミド・サヌシSanusi Lamido Sanusi

新郎側:
 新郎の父ムハンマド・ブハリ大統領閣下
 新郎の母アイシャ・ブハリAisha Buhari
 新郎の姉妹ザラー・ブハリZarah Buhari

伝統的君主:
 イフェ王【オオニorオニ】オジャジャ2世、“オバ”・アデイェイェ・エニタン・オグンウシ陛下(His Royal Majesty Oba Adeyeye Enitan Ogunwusi, Ojaja II, The Ooni of Ife : His Imperial Majesty Alayeluwa Arole Oduduwa Olofin Adimula, Ọ̀ọni Adeyẹ́yẹ̀ Ẹnitan Bàbátunde Ògúnwusi Ọjàjà II, Ooni of Ife)

要人:
 ナイジェリア連邦共和国副大統領イェミ・オシンバジョ閣下(Yemi Osinbajo
 ナイジェリア連邦共和国ニジェール・デルタ担当大臣ゴッズウィル・アクパビオ閣下(Godswill Akpabio
 ナイジェリア連邦共和国通信・デジタル経済大臣イーサ・アリ・パンタミ閣下(Isa Ali Pantami
 元・大統領グッドラック・ジョナサン閣下(Goodluck Jonathan
 元・副大統領アティク・アブバカル閣下(Atiku Abubakar
 ガンビア大統領夫人ファトゥマタ・バー・バロウFatoumata Bah Barrow

 

 (西アフリカピジン英語)Yusuf Buhari and Zahra Bayero wedding fotos: President Muhammadu Buhari son fatiha fotos – BBC News Pidgin

 

 (英語)Wedding of Yusuf Buhari to Princess Zahra Nasir Bayero – Royal presidential wedding – THE AFRICAN ROYAL FAMILIES

 

M & M Photography(@m_and_m_photographyng) • Instagram写真と動画

 

M & M Photography(@m_and_m_photographyng) • Instagram写真と動画

結婚予定(2021年8月20日):ナイジェリア伝統的君主/ビチ首長の娘がブハリ大統領の息子と結婚予定(2021年8月)ブライダルシャワーでのドレスについてイスラム法警察が苦言

 2021年8月20日に、ナイジェリア連邦共和国カノ州の伝統的君主のひとりビチ首長“アルハッジ”・ナシル・アド・バイェロ殿下(His Royal Highness Alhaji Nasiru Ado Bayero, Emir of Bichi)の娘ザハラ・ナシル・バイェロ王女(Princess Zahra Nasir Bayero)と、ナイジェリア連邦共和国大統領ムハンマド・ブハリ閣下(His Excellency Muhammadu Buhari GCFR)の子息ユスフ・ブハリ氏(Yusuf Buhari)が結婚予定だそうです。
 8月3日にブライダルシャワー(女性側の友人などの身内の祝い)がおこなわれたようですが、そこでのザハラ王女のドレス(肩と腕が見えている)についてソーシャルメディアで批判が広がりイスラム法警察(Hisbah)が苦言(「あなたは法を超えた存在ではない」)を呈する事態となっています。

 ナイジェリアの北部の州ではシャリーア(イスラム法)が敷かれており、伝統的君主はイスラム教の裁判官の役割を務めることもあります。
 ザハラ王女の父、ナシル殿下は(新設の)第2代ビチ首長ですが、初代ビチ首長でもある伯父のアミヌ殿下がその地位にあるカノ首長は北部で第二位の権威を持つと言われるものです。またザハラ王女の祖父・故アド・バイェロ首長は長期に渡りカノ首長を務めていました。
 この状況下で、ザハラ王女がシャリーアに従っていないというのは、やや困る話ではあります。
 この話は今のところこれ以上の拡大は見られませんが、結婚相手が大統領の息子ということもあるため、予定外のところに飛び火する可能性もあります。

 結婚式は8月20日にビチ首長の宮殿でおこなわれる予定です。
関連:
 結婚式(2021年8月20日):ナイジェリア伝統的君主/ビチ首長の娘ザハラ・ナシル・バイェロ王女と大統領の息子ユスフ・ブハリ氏。大統領、ジョナサン(元)大統領、イフェ王など多数の参列

 

 (英語)All is Set for Yusuf Buhari’s High Octane Wedding | THISDAYLIVE

 

 (英語)Zahra not above the law – Hisbah slams Yusuf Buhari fiancee's bridal gown – Daily Post Nigeria

Daily Post NigeriaさんはTwitterを使っています 「Zahra not above the law – Hisbah slams Yusuf Buhari fiancee’s bridal gown https://t.co/BvoxMQKycN」 / Twitter

 

 (英語)'You're not above the law' – Hisbah kicks over Yusuf Buhari's fiancée bridal shower gown – TheCable Lifestyle

TheCable LifestyleさんはTwitterを使っています 「‘You’re not above the law’ — Hisbah kicks over Yusuf Buhari’s fiancée bridal shower gown | TheCable Lifestyle https://t.co/0I9k4QmpXr https://t.co/GN8VueRyjB」 / Twitter

記事(英語):アフリカで最も裕福な10人の王(2020年12月)定期的に出てくるタイプの記事

 アフリカではいろいろなメディアから定期的に出てくるタイプの記事ですが、アフリカのお金持ちの王様のランキングを発表する記事です。
 細かい信憑性はいささか疑問点があるのと、資産総額か年の収入かなどで結果が変わったり、直近の大きな変化を織り込んでいる可能性もあるため、毎回読んでしまいます。

最近では10月に別記事を取り上げました:
 記事(英語):アフリカで最も裕福な六人の王。モロッコ王、ナイジェリアのウグボ王・イフェ王、エスワティニ王(スワジランド王)、南アフリカのズールー王、ガーナのアシャンティ王(2020年10月)

 なお、国家元首ではない、共和国内の王様も含まれるのが通例です。

 

 (英語)Richest Kings in Africa 2020: Current net worth of the richest monarch

 

 今回の記事では、一番トップの写真の三人が、ナイジェリアの前カノ首長、南アフリカのズールー王、ガーナのアシャンティ王です。
 ナイジェリア中央銀行(元)総裁で、前カノ首長“アルハッジ”・ムハンマドゥ・サヌシ2世殿下は今年【2020年】3月に州政府によって廃位されています(前首長の子息が次に即位)。廃位の理由として、伝統を破っただの州知事との対立だのが挙げられていましたが、この記事のトップに写真が掲載されていたので、「もしやルール外の凄まじい蓄財が明らかになったのか!?」と驚きましたが、なんとランキングには登場しないという驚愕のオチでした。……なんで写真のせたんです??

 

 さて、本編以外で驚きがありましたが、英語記事を読む暇がない方のために、とりあえずランキング情報だけ書いておきます。

10位:
 南アフリカ共和国の伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下(His Majesty King Goodwill Zwelithini of Zulu)

9位:
 ガーナ共和国の伝統的君主/アキーム・アブアクワ王オサグイェフオ・ナナ・アモアティア・オフォリ・パニン陛下(His Royal Majesty Osagyefuo Nana Amoatia Ofori Panin, Okyenhene【King of Akyem Abuakwa】)

8位:
 ガーナ共和国の伝統的君主/アソグリ国王トグベ・アフェデ14世陛下(His Royal Majesty Togbe Afede XIV, Agbogbomefia【King】 of the Asogli State)

7位:
 ガーナ共和国の伝統的君主/アシャンティ王オトゥムフオ・オセイ・トゥトゥ2世陛下(アシャンティ皇帝 : His Royal Majesty Otumfuo Osei Tutu II, King【Emperor】 of the Ashanti Kingdom【Empire of Ashanti】【Asantehene of Asante】, Kumasehene of Kumasi)

6位:
 ナイジェリア連邦共和国の伝統的君主/ラゴス王“オバ”・リルワン・アキオル陛下(His Royal Majesty Oba Rilwan Akiolu, The Oba Lagos)

5位:
 ナイジェリア連邦共和国の伝統的君主/オニチャ王“オビ”・ンナエメカ・アルフレッド・アチェベ陛下(His Royal Majesty, Obi Nnaemeka Alfred Achebe, Obi of Onitsha)

4位:
 エスワティニ王【スワジランド王】ムスワティ3世陛下(His Majesty King Mswati III of Eswatini)

3位:
 ナイジェリア連邦共和国北部イスラム圏の伝統的君主/ソコト・カリフ庁のスルタン“アルハッジ”・ムハンマド・サアド・アブバカル3世陛下(His Eminence Alhaji Muhammad Sa’ad Abubakar III, The Sultan of Sokoto, Amir al-Mu’minin)

2位:
 ナイジェリア連邦共和国の伝統的君主/ウグボ王“オバ”・フレデリック・オバテル・アキンルンタン陛下(His Royal Majesty Oba Fredrick Obateru Akinruntan, the Olugbo of Ugbo)

1位:
 モロッコ王モハメッド6世陛下(His Majesty the King Mohammed VI of Morocco)