ナイジェリア伝統的君主:イバダン王国で昨年【2017年】オヨ州政府に新たに“王”として認められた多数の首長(21人?)が、これを認めた現職州知事らを批判している元・州知事の上院議員(かつ同王国の上位の首長のひとり)を非難「嫉妬だ!」(2018年9月)

 ナイジェリア連邦共和国オヨ州の伝統的首長イバダン王“オバ”・サリウ・アカンム・アデトゥンジ陛下(His Royal Majesty【His Imperial Majesty】 Oba Saliu Akanmu Adetunji, the Olubadan of Ibadan)の90歳記念式典を多数の首長が欠席した件ですが、欠席の件はスルーされたまま、次の展開に移るというか、同じことが続いているというか、そういう記事が出ています。

 

 (英語)Ibadan Chieftaincy crisis: New kings tackle Ladoja – Vanguard News

 

 この問題ですが、どこが“本丸”なのかナイジェリアのニュースがどこも教えてくれないので、そもそもなんでこうなっているのかよくわからないのですが……。

 

 いちからいきます

 まずナイジェリア連邦共和国の伝統的首長は州政府レベルで公認されています。
 つまり、わかりやすくいえば、州知事が認めれば、ポンポンと王様が増えます。インチキも起きています(ざっくりいうと、有力者が州知事に金を渡して、存在してもいなかった王国の王になる、といったような)。
 人々が納得しないと、場合によっては暴動が起きます

 イバダン王国では、もちろんイバダン王がいるわけですが、上級の首長も多数います(英語記事では、普通名詞では「High Chief」が用いられることが多く、あるいはそれぞれの個別の称号が用いられます)。
 この上級の首長らは、枢密院に相当するもの(Olubadan-in-council ?)に列席していると思われます。

 さて、騒動ですが、2017年にオヨ州政府が、イバダン王国から21人の首長を王【King】の格相当として認めた、ということがありました(彼らに第一級伝統的統治者をあらわす Oba が使用されはじめます)。
 これに対し、イバダン王自身が冷淡な反応(そりゃ自分の王国から21人の王様が新たに生まれますとかいわれたら……)を示したほか、上記の枢密院に属する元オヨ州知事・上院議員ラシーディ・アデウォル・ラドジャ(High Chief Rashidi Adewolu Ladoja, The Osi Olubadan of Ibadan)がこれを州知事の失政隠しのためと批判しています。「王位バラマキ政策」ということでしょう。

※とはいえ、もともとのイバダン王国にイバダン王以外の“王”がいなかったかどうかはよくわかりません(いないと思っていますが……第二級伝統的統治者は“王”とは言及されません)。
 今回の21人は「His Royal Majesty」の敬称が用いられていますが、彼らはイバダン王に対し「His Imperial Majesty」を使用し(また報道でも使用される場合があり)、イバダン王が上位者であることは変わらないと発言し続けています。

 さて、ラドジャ元州知事・元上院議員ですが、イバダン王に即位するという願望を隠しておらず、また、当時の複数の記事から、彼の血統自体がイバダン王の候補として重要なものであるととれる内容があります(とはいえ、イバダン王国には王統はないという記事もありますが……もしやラドジャ元上院議員を格下げするためにないと報じているのではという疑惑も)。

 今回、彼を「嫉妬だ!」などと非難しているのは、レカン・バログン陛下(His Royal Majesty Oba Lekan Balogun, The Otun Olubadan of Ibadan)で、こちらの方も元・上院議員のようです(ややこしい!)。
 これまでの経緯からして、この“陛下”が、新規量産された諸王のボス格のようです。

 そのほか、上記の記事から、
 オウォラビ・オラクレヒン陛下(His Royal Majesty Oba Owolabi Olakulehin, The Balogun of Ibadan【Ibadanland】)、
 タジュデエン・アジボラ陛下(His Royal Majesty Oba Tajudeen Ajibola,The Osi Balogun of Ibadan【Ibadanland】)、
 エッディー・オイェウォレ陛下(His Royal Majesty Oba Eddy Oyewole, The Asipa Olubadan of Ibadan【Ibadanland】)、
 ラテエフ・グバダモシ・アデビンペ陛下(His Royal Majesty Oba Lateef Gbadamosi Adebimpe, The Asipa Balogun of Ibadan【Ibadanland】)、
 アミドゥ・アジバデ陛下(His Royal Majesty Oba Amidu Ajibade)、
 といった方々の名前がありますが、このうち最後の方を除くと、このたくらみ(?)に関する記事でよく名前を見ます。
※最後のアミドゥ・アジバデ陛下が枢密院のメンバーかどうかはわかりません。

 イバダン王国の枢密院のメンバー(11人)の称号は(下記の名称の末尾に「of Ibadan」か「of Ibadanland」が付けられます)、
 Otun Olubadan
 Osi Olubadan
 Asipa Olubadan
 Ekerin Olubadan
 Ekarun Olubadan
 Balogun
 Otun Balogun
 Osi Balogun
 Asipa Balogun
 Ekerin Balogun
 Ekarun Balogun
 となっており(注意:間違っているかもしれないし、最近の情勢で根本的に変わっているかもしれません)、このうち先頭の「Otun Olubadan」と、単独名称の「Balogun」が、イバダン王「Olubadan」に次ぐものとなっているそうで、二人とも21人に入っています。
 おそらく Olubadan が末尾についている称号と、Balogun 系統の称号が、イバダン王国の伝統的二集団からそれぞれ出ているのだと思います。

 先にいったとおり、首謀者のバログン陛下は、イバダン王が彼らの上位者であることは変わらないといい続けていますが、これは、自身が将来イバダン王になる可能性を考えてのことかもしれません。

 

 21人が王となったということは、ラドジャ元上院議員を除いた枢密院のメンバー10人が全員そうなっているとしても、残り11人はより下位の首長か、あるいは首長ではないが有力者の人々ということになると思われます。
 妙にもほどがある話ですが、記事からは、オヨ州では他でも王位バラマキがおこなわれていることが示されています。
 州内部でも納得しない人はいくらでもいるでしょうが、複数の州にまたがる民族の中で、ひとつの州だけ中ボス連中が大ボスに昇格というのは、民族集団内部でもいろいろ複雑な感情が渦巻いていそうですが……。

 

追記:
 記事をまたひとつ見かけたので。

 (英語)Olubadan: Obas accuse Ladoja of fueling chieftaincy crisis– The Sun News

 だいたい同じ内容なのですが、こちらによりますと、アミドゥ・アジバデ陛下が「Ekaarun Olubadan」となっています(「Ekarun Olubadan」のスペルミスか、異表記でしょう)。

 また、こちらの記事に掲載された批判によりますと、そもそも2005年に、今批判を受けているラドジャ元州知事・元上院議員が似たようなことをたくらんだと書かれています(当時は彼自身が州知事です)。
 「Jagun Balogun of Ibadanland」という上記の枢密院のメンバーよりは下位であろう首長や、「Baale」と呼ばれている「Onijaye of Ijaye」「Baale of Lalupon」「Onikereku of Ikereku」「Baale of Erunmu」も含めて47人を第一級統治者にしようとしたが、臆病で無惨に失敗したとのこと。
 これが本当なら、彼自身が実現して将来のイバダン王への確実な布石にしたかったことを、「やっぱまずいかな……」と尻込みした後、長い時を経てレカン・バログン陛下らが今回おこなってしまったので反発しているという可能性もあり、もしそうなら「嫉妬だ!」というのもあながち間違いではないでしょう(「嫉妬」と指摘しているのは、あるいは彼自身が王になれなかったことだけではなく、彼自身が主導できなかったということも含んでいるのかもしれません)。

 とはいうものの、事実に関する内容が正しいのかどうかもわからないし、愚かなことをやった人間と思いとどまった人間のどちらがマシか、という問題なら、答えはいうまでもありません。

 いずれにせよ、ラドジャ元州知事・元上院議員はともかくとして、イバダン王自身が新たな王たちを受け入れていない以上(そして王たちが失礼な振る舞いをした以上)、少なくとも代替わりまでは膠着状態が続くのではないでしょうか。

 

ナイジェリア伝統的君主:イバダン王サリウ・アカンム・アデトゥンジ陛下の90歳祝賀式典がおこなわれる(2018年8月)

 2018年8月、ナイジェリア連邦共和国オヨ州の伝統的君主のひとり、イバダン王“オバ”・サリウ・アカンム・アデトゥンジ陛下(His Royal Majesty【His Imperial Majesty】 Oba Saliu Akanmu Adetunji, the Olubadan of Ibadan)の90歳記念式典がおこなわれたようです。
 1928年8月26日生まれ。

 

 (英語)Celebrations as Olubadan turns 90 – Daily Trust

Daily Trustさんのツイート: "Celebrations as #Olubadan turns 90 https://t.co/Hrs3vOG6Lw #dailytrust @oyostategovt @AAAjimobi… "

 

 いくつか気になったことや、気になっていることを。

 まず称号は、「Olubadan of Ibadan」と英語では書かれていることが多いのですが、「Olubadan」自体に「Ibadanの統治者」のような意味合いがあるらしいので、意味上は重複しているかと思います。とはいえ、現在のナイジェリアでは普通の書き方になっていますね。

 また、イバダン王ですが、王統のようなものはなく、イバダン王国の二集団から交互に選ばれる、ということのようですが……(詳細未確認)。
 陛下自体は2016年即位との情報があります(いくらなんでももっと若い人にしませんか……??)。

 また、今回の式典ですが、事前にかなり大袈裟な報道がされていたものの、イバダン王国枢密院の枢密顧問官を含む多数の首長が無断で欠席したとの情報があります(州政府主催行事との話もありますが……)。
 訪問が予想されていた大物は、上記記事からは、イフェ王【オオニorオニ】オジャジャ2世、“オバ”・アデイェイェ・エニタン・オグンウシ陛下(His Royal Majesty【His Imperial Majesty】 Oba Adeyeye Enitan Ogunwusi, Ojaja II, The Ooni of Ife)の名前しか見当たりません。

 参列者として以下の方々の名前が挙がっています。

 元オヨ州知事・上院議員ラシーディ・アデウォル・ラドジャ(High Chief Rashidi Adewolu Ladoja, The Osi Olubadan of Ibadan)、イバダン王国枢密顧問官の一人で、「The Osi Olubadan of Ibadan」はイバダン王を補佐する上位の伝統的首長かと思われます(“High Chief”なので)、

 ナイジェリア一の大金持ちこと、ウグボ王“オバ”・フレデリック・オバテル・アキンルンタン陛下(His Royal Majesty Oba Fredrick Obateru Akinruntan, the Olugbo of Ugbo)

 エルワ王“オバ”・サミュエル・アデバヨ・アデグボラ陛下(His Royal Majesty Oba Samuel Adebayo Adegbola, the Eleruwa of Eruwa)、

 など。

 

タイ王国のソムサワリー王女殿下が脳への血液供給不足(?)により公務を全面取りやめの模様(2018年8月)ラーマ10世陛下の元妻。「王女」ではなく「妃」のような気もしますが外務省表記に従っておきます

 タイ王室のソムサワリー王女殿下(Her Royal Highness Princess Soamsawali)が、脳への血液供給不足(?)により公務を全面的に取りやめて、入院を続ける模様です。

 

 (英語)Princess Soamsawali in Chulalongkorn Hospital for medical treatment |
 (英語)Princess Soamsawali of Thailand admitted to hospital – Royal Central

 

※正直、どういう問題かいまいち理解していませんが。

 もともと別の問題と思われていたものが、新たに別の症状が出たため、検査をおこなったところ発覚したようです。

 

 ラーマ10世陛下の皇太子時代の元妻で、称号については結婚と同時に与えられているため、「王女」ではなく「妃」ではないかとも思いますが、とりあえず外務省表記に従っておきます。

タイ基礎データ | 外務省

2009年1月 ソムサワリー王女殿下

※タイ王室の称号は複雑怪奇なので、あまり考えたくありません。

 

 陛下の従妹で、シリキット皇太后陛下の姪にあたります。

 

ブルガリアの裁判所が、旧ブルガリア王シメオン2世陛下に対してヴラナ宮殿を政府に“返還”するよう判断(1946年に共産党政権が強制的に接収し、1990年代に憲法裁判所により王室に返還されていた)。陛下と対立している首相の意向を裁判所が丸飲みか。陛下は「またも亡命に追い込まれようとしている」と欧州司法裁判所に提訴を準備(2018年9月)

 ブルガリア語の記事はよくわからなかったので Royal Central の英語の記事になりますが、ここは時々いい加減なことを書くので、注意しつつ情勢を見ていきます。

 

 (英語)Tsar Simeon: “I am being forced into exile again” – Royal Central

 

 Royal Central は完全に旧ブルガリア王シメオン2世陛下(His Majesty King【Tsar】 Simeon II of the Bulgarians : 元ブルガリア共和国首相シメオン・サクスコブルクゴツキSimeon Saxe-Coburg-GothaSimeon Sakskoburggotski)の側を支持しています。

 ヴラナ宮殿は、1946年に共産党政権が強制的に接収し(シメオン2世陛下は亡命)、共産主義政権崩壊後の1990年代に憲法裁判所により王室に返還されていたようです(陛下と姉のブルガリア王女マリヤ・ルイザ殿下(コハーリ女公 : Her Royal Highness Princess Maria Louise of Bulgaria, Princess of Koháry【Fürstin Koháry】)に返還)。
 その後、公園部分がソフィア市に寄贈。
 シメオン2世陛下と旧ブルガリア王妃マルガリータ陛下(Her Majesty The Queen【Tsaritsa】Margarita of the Bulgarians : マルガリータ・サクスコブルクゴツカMargarita Saxe-Coburg-GothaMargarita Sakskoburggotska)が暮らしています。

 憲法裁判所の判断が覆されたとすると、同じく憲法裁判所の判断なのかと思いますが、上記の記事からははっきりしません。

 また同記事によれば、(今のところなぜか名前をはっきり書いていませんが)、ボイコ・ボリソフ首相(Boyko Borisov)の意向を裁判所が丸飲みしたように受け取れます。

 陛下は「またも亡命に追い込まれようとしている」と発言し、欧州司法裁判所への提訴を準備。
 首相の意向を裁判所が丸飲みしたと判断されれば、権力の分立が崩れており、欧州連合の中で問題視される可能性もあります(今の EU にそんなことしている「体力」があるとも思えませんけれど)。

 はたしてどうなることでしょう。

 

関連:
 インタビュー映像:旧ブルガリア王シメオン2世陛下、ヴラナ宮殿所有問題について(2018年10月)

 

オランダ王ウィレム=アレクサンダー陛下が、ロイ・デ・ライター空軍少佐を軍事ウィレム騎士団の騎士に叙任(2018年8月)

 2018年8月31日、オランダ王ウィレム=アレクサンダー陛下(Willem-Alexander : His Majesty The King of the Netherlands)は、アフガニスタンでの軍事行動における英雄的活動をたたえ、ロイ・デ・ライター空軍少佐(Major-Flyer Roy de Ruiter)を軍事ウィレム騎士団(Military William Order)の騎士に叙任しました。
 同騎士団は、オランダ君主を総長とするもので、生存している叙任された騎士はこれで四名となります。

 オランダ王妃マクシマ陛下(Máxima : Her Majesty the Queen of the Netherlands)も臨席。

 

 (写真一覧)Military award ceremony, The Hague | Editorial Photos, Celebrity, News, & Sports Images | Rex
 (写真一覧)PPE Agency | 29 foto’s gevonden met “31-08-2018 Militaire”
 (写真一覧)Robin Utrecht | Photoshelter

 (写真一覧)Den Haag August 31, 2018 画像と写真 | Getty Images

 

King Willem-Alexander of The Netherlands and Queen Maxima of The… ニュース写真 | Getty Images
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肩に手をあてていますが、中世の騎士叙任において剣を肩にあてていたものの近代形式かもしれません(単に「よくやった」みたいなことかもしれませんが)/
King Willem-Alexander of The Netherlands attends the military… ニュース写真 | Getty Images
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