戴冠式(2022年10月29日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王ミスズールー陛下の戴冠式。4万人。大統領・州首相・エスワティニ王(スワジランド王)ムスワティ3世陛下・ケープタウン大主教らが参列

 2022年10月29日、南アフリカ共和国の伝統的君主の一人、ズールー王ミスズールー・シンコビレ・カズウェリティニ陛下(His Majesty King Misuzulu Sinqobile kaZwelithini of Zulu)の戴冠式がおこなわれました。

 4万人の参列との数字が出ていますが、スタジアムが埋まっているのは映像からわかります。

 戴冠式中、南アフリカ共和国大統領マタメーラ・シリル・ラマポーザ閣下(Matamela Cyril Ramaphosa)より伝統的君主としての承認証明書が渡され、署名がおこなわれました。
 同共和国、クワズールー・ナタール州首相ノムサ・デュベ・ヌクベ閣下(The Honourable Nomusa Dube-Ncube MPL)の挨拶があり、キリスト教/アングリカン・コミュニオンの南部アフリカ聖公会ケープタウン大主教タボ・マゴバ座下(The Most Reverend【His Eminence】 Dr Thabo Makgoba, Archbishop of Cape Town, Primate of the Anglican Church of Southern Africa)による陛下への聖別がおこなわれ、エスワティニ王ムスワティ3世陛下(His Majesty King Mswati III of Eswatini)の臨席と挨拶もありました。

 その他、多数の要人らの参列があり、報道も多いのですが、国営の SABC のYouTube公式チャンネルより映像を(多数)貼っておきます。

 

短い報道の映像/
SABC News:
King Misuzulu kaZwelithini officially coronated as AmaZulu king – YouTube

 

追記:
 euronews 系の africanews が報道していたのでリンクしておきます。
South Africa recognises King Misuzulu kaZwelethini – YouTube

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南アフリカ伝統的君主/“雨の女王”継承問題:「マサラナボ王女は雨の女王になることに興味はあるのか」と問われた国会議員が「彼女に選択の余地はない」と回答(2022年10月)南アフリカ「共和国」の未成年女子なんですが……

 延々と続いているこの問題ですが、軽くまとめたという感じの英語記事がありました。 
 内容自体は既出のものばかりですが(既出のものが混乱しているという問題はありますけれど)、以下の部分は注目に値すると思います。

 

 (英語)Battle for Modjadji Rain Queen crown is ongoing | Letaba Herald

When asked if Mosalanabo is interested in becoming the Rain Queen, Motshekga said that she does not have a choice as it is her bloodline.

「マサラナボ(王女)が雨の女王になることに興味があるかどうか尋ねられた時に、モツェクガ議員(モチェハ)は彼女の血統がそうなので彼女に選択に余地はないと言った」。

 

 なぜそこで「もちろんだ。彼女は常にそう望んできた」と言えないのか、と困惑させられます。
 王女本人は興味がないと白状しているようなものなのでは。

 

 南アフリカ共和国は国内の伝統的君主の承認をしているとはいえ、それぞれは一市民であるという前提も当然あります。
 各部族の王族かどうかという基準もあるようです(はっきりとしたことはわからないのですが、「王として認めろ」と主張して「王族ですらない」と判決を受けていた例もあるので、なにかあるのだと思ってます)。
 マサラナボ王女は王族として承認されている範囲でしょうし、継承者として認められていましたが、本人が望んでいない状況ではどうするのか。
 未成年女子(現在17歳)に女王になるのを強制するような発言が国会議員から出るようでは、民主主義の共和国ではなく、なんだかよくわからない国です。いやもう、なんだかよくわからない国なんですが

 兄のレクケラ王をたてたモジャジ王室評議会の(動機の根本はともかくとしても)政治家に引き取られたマサラナボ王女が地元にずっとおらず、儀式についても学んでおらず、その状態で来年から女王です、では伝統的でもなんでもないというのは理解できるところです。

 

 とはいうものの、公平に言って、王女は、兄やおじを含む相手と争いになっているような状況で、あえて興味があるとも言いにくいのだという可能性もあります、
 プレトリアにある高等裁判所が彼女自身が(他の関係者を除いて)相談をできる弁護士を選出するよう求めているのも現時点での彼女の考えを早く引き出さないとこの件を終わらせられないからでしょう。

 王女が女王になることを望んでいると回答した場合、モジャジ王室評議会との法廷闘争に入ります。「伝統的指導権と政府の間の枠組みに関する法律」から考えると、王室評議会による君主に関する事項を一方的に変更した決定は同法に違反している可能性は高いので、レクケラ王即位は無効と判断されるかもしれません。

 いずれにせよ、王女がどう考えているか、になるんですが……。

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

南アフリカ伝統的君主/“雨の女王”継承問題:高等裁判所がマサラナボ王女の後見人の政治家による訴訟延期要請を却下、また王女自身による代理人の選定を要求(2022年10月)

 報道によりますと、2022年10月14日、南アフリカ共和国のプレトリアにある高等裁判所は、“雨の女王”継承問題について、マトール・モツェクガ議員(マトール・モチェハMathole Motshekga)の訴訟延期要請を却下。
 また、同議員に、対立しているモジャジ王室評議会側への訴訟費用の支払いを命じました。
 また、マサラナボ王女(来年4月に18歳)に対し、自身の弁護士を選定するように要求しています。

 モジャジ王室評議会が故・女王の息子であるレクケラ王子をロベドゥ人の王として選出するという動きに対して、(もともと後継として大統領なども承認していた)妹のマサラナボ王女の後見人であった同議員などが大反発、訴訟が起きていましたが、そもそもこの議員が王女のために訴訟を起こすことはできないとの判断が出ています(高等裁判所なので、上訴は可能かとも思いますが……)。
 記事にある裁判官のコメントからすると、王女が女王になることに興味があるかすらあやふやなので、当人に代理人を選出させて裁判を進めて早く終わらせたいように取れます(本人が望んでいなければ訴訟が成立しませんが)。

 

 (英語)Rain Queen battle: Mathole Motshekga ordered to pay Modjadji royal family's legal costs

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

南アフリカ伝統的君主/“雨の女王”継承問題:レクケラ・モジャジ王子殿下の即位式がおこなわれる(2022年9月)大統領の承認未定・妹のマサラナボ王女殿下を支持する側の訴訟など継続中

 2022年9月30日、南アフリカ共和国のロベドゥ人の君主にレクケラ・モジャジ王子殿下(His Royal Highness Prince Lekukela Modjadji)が即位しました。
 即位したというか、即位式が地元でおこなわれました。
 さらに戴冠式がおこなわれれば、伝統的な儀式のほうは一区切りになります。

 

式は非公開なので関係者がコメントしているだけです/
SABC News:
Prince Lekukela Modjadji installed as King of the Balobedu – YouTube

 (英語)Prince Lekukela Modjadji installed as King of the Balobedu – SABC News – Breaking news, special reports, world, business, sport coverage of all South African current events. Africa's news leader.

 

 南アフリカ共和国の伝統的君主の承認は大統領が担当省庁や CTLDC などの専門機関のアドバイスを受けて判断しますが、さらに裁判で覆る可能性があるという面倒な状況にあります。
 この“雨の女王”継承問題は、この200年程度の代々が女王であったことから特別な注目を集めていますが、正直どうなるのかわかりません。

追記:
 (英語)Princess Masalanabo can’t be queen for no-show at home for traditional rituals, says Modjadji Royal Council

The legal battle over the throne continues on October 13 in the Polokwane High Court.

 王位(女王位)に関する裁判は10月13日から始まるとしています。
 一方、今回の即位式に対する差し止めを求めていた裁判は、王女の保護者となっている政治家に王女の代理人としての権限がないという判断が出ていたようで、その決定を受けて即位式もおこなわれたということのようです。
(そうなると10月13日からの裁判もどうにもならないのではないかという気もしますが……)

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

南アフリカ伝統的君主:ムポンド人の王位に関して、最高上訴裁判所が(5月に崩御し、6月に第一級公葬がおこなわれた)ザノズコ・シカウ陛下の王位を無効と判断(2022年9月)

 2022年9月14日、南アフリカ共和国の最高上訴裁判所は、故ザノズコ・シカウ陛下(Kumkani Zanozuko Sigcau)がムポンド人の王であると、大統領や CTLDC が承認したのは誤りだとする、ウェジズウェ・シカウ王女(Wezizwe Sigcau)らの訴えを認めました(報道などでの王女の名前と判決文の名前 Wenzile Feziwe Sigcau が異なっていますが詳細不明)。
 これにより、2018年の憲法裁判所の承認によりザノズコ・シカウ陛下を王と認めた決定は無効となりました。

 

Supreme Court of Appeal ZAさんはTwitterを使っています: 「Media Summary: Wenzile Feziwe Sigcau & Another v The President of the Republic of South Africa, the Commission on Traditional Leadership & Others (Case no 961/2020) [2022] ZASCA 121 (14 September 2022) The SCA today upheld an appeal against an order by the Gauteng Division. https://t.co/8nqZBPIXno」 / Twitter

 

 なお、故ザノズコ・シカウ陛下は(とりあえず陛下表記を続けますが)、5月31日に崩御し、南アフリカ共和国大統領マタメーラ・シリル・ラマポーザ閣下(Matamela Cyril Ramaphosa)が弔意を表明・第一級公葬(Official Funeral Category One)もおこなわれました。
 その後、摂政や次期王位に関する議論も出ていたところでこの判決、となり、正直もうなにがなにやら……。

 判決は、訴えを起こしていた王女の父・故ムポンドンビニ・シカウMpondombini Sigcau)を正統な王と認めています。この前提で次の王(or女王?)を決めなさいということでしょうが……。

 王女は自らが女王となるつもりでしょうが、判決文がそこまで踏み込んだものかどうかは……そもそもこの王女の きょうだい とかはいるのかいないのか、いても何人いるのか、などまったくわかりません。

 また、どうなるにせよその決定に時間がかかり、かつ決定された後に裁判になるのも目に見えているので、この件に限らず、南アフリカ共和国は伝統的君主に関する制度設計に壮大に失敗してしまった感がありありとします。

 

大統領から陛下への弔意:
 (英語:南アフリカ共和国 政府 公式サイト)King Zanozuko Tyelovuyo Sigcau | South African Government

 

葬儀の様子(5時間以上)/
SABC News:
Official Funeral Category One of AmaMpondo King Zanozuko Sigcau – YouTube