前スペイン王ファン・カルロス1世陛下がスペインを出国するとの報道(2020年8月)タックス・ヘイヴンを巡るスキャンダルの最中。帰国は生涯ないとの観測も

 タックス・ヘイヴン(租税回避地)を巡るスキャンダルなどが報じられていた前スペイン王ファン・カルロス1世陛下(His Majesty King Juan Carlos I of Spain)ですが、スペイン王国を出国すると報道されています。
※一部では「亡命」という単語が……。

2020年8月4日 22時15分追記:
 陛下は中米のドミニカ共和国に到着しているとの報道が出ています。
2020年8月4日 22時39分追記:
 ポルトガル説も出ているようです。

 

 (過去において)海外の口座に中東の君主(サウジアラビア財務大臣が故サウジアラビア王からの指令で?)からの送金(リベートの類?)が確認され、子息のスペイン王フェリペ6世陛下が遺産の相続権を放棄するという声明を出したという報道がありました。父に関する予算もカット。そしてスペインの最高裁判所から捜査命令が出ているようです。
 また、その後、スイス連邦からスペイン王国に秘密裏に金が動かされたとの報道も出ました。こちらは現在のところ、スペインおよびスイスでは捜査は開始されていませんが、開始されると見込まれており、また陛下側は捜査に協力するとのことです。

 当面のところ、陛下の称号は維持される見込みと、前王妃ソフィア陛下への影響は考慮されていませんが、これらもどうなるかわかりません。

 

 (英語)Spanish royal family: Spain’s emeritus king Juan Carlos I to leave country amid tax haven scandal | News | EL PAÍS in English
 (英語)BREAKING: King Juan Carlos of Spain leaves country in exile amid corruption scandal – Royal Central

 不正疑惑のスペイン前国王、亡命の意向 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
 スペイン前国王 国外へ 高速鉄道建設計画めぐり収賄疑惑で | NHKニュース

 

追記:
 全体像がよくわかりませんが、サウジアラビアがらみで、サウジ側から資金洗浄がおこなわれつつ最終的に陛下にお金が渡っている、というように思えました。これに関して、元ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ザイン公子妃のコリンナ・ラーセン(陛下の元愛人として名前があがる人)が所有する企業が関わっているとも報道されています。
 スイスの金融機関が関わっているため、スイスの捜査官がスペイン側に陛下の行動に関して問い合わせている状況ともされています。

 一方、NHK は「サウジアラビアの高速鉄道の建設計画をめぐって、工事を受注したスペインの企業連合から見返りに金を受け取った疑惑」としています。
 これは、サウジアラビア王国のハラマイン高速鉄道(メッカ・メディナ高速鉄道)の車両などにおいて、スペイン王国の企業群が受注した件ででしょう。
 サウジアラビアがらみであることは同じものの(また、おそらくこの鉄道の件が問題の核心と思えるものの)、こちらはスイスに関しては情報がなく、別件(というか別の不正というか)なのか。見返りとしていますが、そもそもなんの見返りなのか。

 全体像としては、高速鉄道建設の件で、陛下へリベートというかワイロというかなんというかが渡ったことは確かに思えます。
 無理矢理つなげるならば、スペイン企業 → サウジアラビア王室 → 陛下に関わるスイスの金融機関の口座、となりますが、正確な話は続報を待ちたいと思います。

 

 陛下は2014年に退位するまで国家元首としての特権がありましたが、現在でも一部特権があるようです。
 また、在位中の行為に関する問題についてどういう扱いになるのか、いまひとつはっきりしません(免責特権があるので刑罰などはないとしても捜査もしないわけにはいかないでしょうし)。

 

追記2:
 それにしてもどこの国へいこうというんでしょう。
 現在の世界の状況(新型コロナウイルス感染症【COVID-19】のパンデミック下)では、高齢の陛下を受け入れるのは、医療の質が高く医療体制に余裕がある国となるでしょう。それに加えて不正の疑い(というか出国する時点で疑いどころではありませんが)のある人物を受け入れ、かつスペインと引き渡し条約を結んでいないという夢のような国がいったいどこに……。

2020年8月4日 22時15分追記:
 (この記事の上部にも追記していますが)陛下は中米のドミニカ共和国に到着しているとの報道が出ています。
2020年8月4日 22時39分追記:
 ポルトガル説も出ているようです。

 「王室に対する批判が高まるのを避けたい」というのも、なんともよくわからない話で、もともとがご本人の表明に基づくものなので報道としてはそう書くしかないでしょうが、いったいこれでどうやって批判が高まるのを避けるつもりなのか。

 

追記3:
 (英語)King Carlos is 'staying in the Dominican Republic' after being 'forced into exile' | Daily Mail Online
 (英語)Spaniards ask where Juan Carlos has gone after ex-king leaves country – Reuters

 スペイン前国王、中米ドミニカ共和国へ亡命か 報道 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

 ポルトガル説もあるものの、ドミニカ共和国が有力とみられているようです(正式発表があると見込まれているので、もう少し情報を待った方がよさそうですが)。
 ロイターによれば、

Switzerland classifies the Dominican Republic as a country with which judicial cooperation is “very difficult”, but Spain has an extradition agreement with it.

 スイス連邦はドミニカ共和国を、捜査協力が「きわめて困難」な国としているようです。一方で、スペイン王国は同共和国との間に本国送還/引き渡しに関する合意(条約ではない??)があるともしています。

 

関連・続報:
 前スペイン王妃ソフィア陛下はスペインを離れる予定なし(2020年8月)

 

訃報(2020年8月1日):イタリアのシスマーノ公妃ジョルジアーナ・コルシーニ閣下が薨去(1939~2020)コルシーニ家当主夫人。フィレンツェ市長らが弔意を表明

 2020年8月1日、イタリア貴族のシスマーノ公妃ジョルジアーナ・コルシーニ閣下(Her Serene Highness Donna Giorgiana Corsini, Princess of Sismano)が薨去したようです。
 1939年8月3日生まれの80歳。

 海中での水泳中の心臓発作とみられるとの報道です。

 ローマ教皇クレメンス12世を輩出したコルシーニ家の現当主夫人で、コルシーニ宮殿を開放した展示会の創始などで有名のようです。
 フィレンツェ市長ダリオ・ナルデッラ閣下(Dario Nardella)が「一人の偉大なフィレンツェ人を失った」と弔意を表明。
 また、同地の各界の著名人から相次いで弔意の表明があるようです。

 

 (イタリア語)Morta la principessa Giorgiana Corsini: malore in mare all'Argentario – Cronaca – lanazione.it
 (イタリア語)Malore in mare all'Argentario: muore la principessa Giorgiana Corsini – la Repubblica

 

英国王室のエディンバラ公爵フィリップ王子殿下が、英国陸軍 ザ・ライフルズ の名誉連隊長【カーネル・イン・チーフ】を退任。コーンウォール公爵夫人カミラ妃殿下が新たに就任(2020年7月)

 2020年7月22日、英国王室のエディンバラ公爵フィリップ王子殿下(His Royal Highness The Prince Philip, Duke of Edinburgh)の英国陸軍 ザ・ライフルズ(The Rifles) の名誉連隊長【カーネル・イン・チーフ】(Colonel-in-Chief)退任の小式典と、コーンウォール公爵夫人カミラ妃殿下(Camilla : Her Royal Highness The Duchess of Cornwall)による就任の小式典がそれぞれ別の場所でおこなわれました。

 フィリップ王子殿下の名誉連隊長在任は67年間に及ぶものでした。

 

The Prince of Wales and The Duchess of CornwallさんはTwitterを使っています 「🎺 Four Buglers sound The Rifles Assembly, marking the transfer of Colonel-in-Chief of The @RiflesRegiment from The Duke of Edinburgh to The Duchess of Cornwall. https://t.co/MaNQecG2Py」 / Twitter

 

The Royal FamilyさんはTwitterを使っています 「🎥The Duke of Edinburgh was wished, “fair winds and following seas” (an old Naval term) as he was thanked for his 67 years of service to @rifles_regiment today. https://t.co/1l6D9gAb3F」 / Twitter

 

The Royal Family Channel:
Prince Philip Makes Rare Public Appearance as He Hands Over Military Role – YouTube

 

The Royal Family Channel:
Camilla, Duchess of Cornwall, Receives New Military Role at Highgrove Ceremony – YouTube

 

 (英語:英国王室 公式サイト)The transfer of Colonel-in-Chief of The Rifles from The Duke of Edinburgh to The Duchess of Cornwall | The Royal Family

 

The Royal FamilyさんはTwitterを使っています 「Today, The Duke of Edinburgh has been succeeded as Colonel-in-Chief of @riflesregiment by The Duchess of Cornwall, in a ceremony which took place at both Windsor Castle and Highgrove House. https://t.co/MmNujzId5w」 / Twitter

 

The Royal FamilyさんはTwitterを使っています 「The Duke has been Colonel-in-Chief of successive Regiments that have made up The Rifles since 1953, and today, they are the largest infantry Regiment in the British Army. https://t.co/XV3WI7fz7y」 / Twitter

 

The Royal FamilyさんはTwitterを使っています 「The Duke of Edinburgh’s arrival was marked by four Buglers, who are members of The Rifles’ military band. https://t.co/gbybzsqzp8」 / Twitter

 

The Royal FamilyさんはTwitterを使っています 「The Duke was thanked for his 67 years of service and support to the Regiment, before the Buglers sounded the ‘No More Parades’ call, marking HRH’s final ceremony as The Rifles’ Colonel-in-Chief. https://t.co/4TBllrOVX6」 / Twitter

 

Today, The Duke of Edinburgh has been… – The Royal Family | Facebook

 

The Royal Family(@theroyalfamily) • Instagram写真と動画

 

ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ベルレブルク公子ルートヴィヒ=フェルディナント殿下が当主グスタフ殿下を提訴した件、第二審は2020年7月の模様(2020年1月)「もはや事実婚は普通の結婚と同等であり、庶民と事実婚した当主は先祖の遺言に背いている」と主張

 ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ベルレブルク公グスタフ殿下(Gustav : His Highness The Prince of Sayn-Wittgenstein-Berleburg : グスタフ・フュルスト・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ベルレブルクGustav Fürst zu Sayn-Wittgenstein-Berleburg)は、デンマーク王女ベネディクテ殿下の息子、つまりデンマーク女王マルグレーテ2世陛下の甥にあたります。

 このザイン=ヴィトゲンシュタイン=ベルレブルク家は、先々代のグスタフ・アルプレヒト殿下が、財産相続に厳しい制限を付けています(第三帝国時代)。
 それは、財産相続人は男子であり結婚相手を「貴族・プロテスタント・アーリア人」に限る、としたものです(ただし、完全に詳細な内容は公開されていないはずです)。
 この条件を満たさない結婚をおこなうと即座に財産の相続権を失い、すでに所有している場合それでも失う、というのがこれまでのドイツの判例からほぼ確実視されています。

 先代のリヒャルト殿下は、結局はデンマーク王女と結婚したので、まったく問題なかったのですが、現当主のグスタフ殿下は、庶民のカリーナ・アクセルソン嬢(Carina Axelsson)との結婚を望んだものの、結婚すると財産を相続できなくなります。そして、それは城というか館というか、自分の家を遠い親戚に渡さなければならないことを意味します。

 これが元々の状況で、これに対し、「アーリア人などを条件に含む元々の遺言はナチス時代のものでおかしい」という見解はありました。しかしそれでもドイツの判例からどうにもならないだろうというのがあり、それで二人は結婚せずに一緒に生活していました。

 ところが、2018年あたりからの報道で、リヒャルト殿下の従弟のザイン=ヴィトゲンシュタイン=ベルレブルク公子ルートヴィヒ=フェルディナント殿下が、グスタフ殿下に対し、自分に財産を譲るよう要求しているとの報道がなされます。
 これが、簡単にいえば、「事実婚はもう普通の結婚と同じなのだから、条件を満たさない人物と事実婚をしているあなたは財産の所有権がない(=財産は私のもの)」ということです(ルートヴィヒ=フェルディナント殿下が次の相続人とみられています)。

 第一審は、グスタフ殿下側弁護士にリッペ公室当主/リッペ公シュテファン殿下が立つという展開がありましたが、ともあれグスタフ殿下側が勝訴。
 ルートヴィヒ=フェルディナント殿下は控訴し、第二審は今年【2020年】7月とのことです。

 この問題は、「“アーリア人”を含む遺言は差別ではないか」(ただしこれだけでは遺言を無効にできないだろうとみられている)に「事実婚と普通の結婚を区別するのは差別ではないか」という問題が絡み、これまでのドイツ王室・貴族関連訴訟で最も面倒なものになるのではないかと思われています。
 また、この件が難しいのは、現実の制度を拒否し自分の意思をつらぬく絶対君主政主義者などのめんどうくさい人たちを除けば、いつかわからないがいつかは事実婚と普通の結婚はドイツでも同等に扱われるのではないかという考えは広範囲にあり、仮にそうだとすると、今回の訴訟でグスタフ殿下が勝利しても、遺言が無効化されない限り殿下が生きている間に殿下が財産を所有できなくなる可能性は残るということもあります。

 付言すると、ドイツでは、過去の当主や一族などの子孫のうち、歴代の本拠地となる城と館を所有している人物が当主とみなされるのが一般的です。これは過去の継承権などとは別の問題で、そう思われています。
 なので、ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ベルレブルク公位継承ルールはともかく、敗訴すればグスタフ殿下は廃位された公という社会的にはとてつもなくうれしくない立場になってしまいます。

 あと、グスタフ殿下の母、デンマーク王女ベネディクテ殿下がドイツでの生活をやめて完全にデンマークに戻ることになると、デンマークは王室予算は増やさねばならないのではないかという気もします。

 

 (英語)The (In)Famous Sayn-Wittgenstein-Berleburg Will, Round 3: When There Is An Estate Worth Half a Billion Up For Grabs, That's Apparently Where Cordial Family Relations End

 

イタリア王室(アオスタ系統)継嗣/プッリャ公爵【称:アオスタ公爵】アイモーネ公子殿下【ロシア在住】の記事(2020年1月)「イタリアが王政復古するとは思わない」

 イタリア王室(アオスタ系統)の継嗣/プッリャ公爵アイモーネ公子殿下(His Royal Highness Prince Aimone of Savoy-Aosta, Duke of Apulia : His Royal Highness The Duke of Aosta)の記事が出ています。

※本人たちは自分たちが正統と主張しているので、すでに父の称号であるアオスタ公爵を使用しています(ときどき忘れてるんじゃないかと思う時がありますが)。

 なお、殿下は、仕事でモスクワに在住しています。ロシアに住み、イタリア王位に興味はないとする記事が出たこともあります。

 イタリア王室(直系)が継承法を絶対長幼制へ改定したことを受けて、アオスタ系統や支持者は反論を発表しましたが、それはそれとして、アイモーネ殿下のコメントを載せた記事が出ました。

 内容というか根本的な立場がはっきりしないのですが、

  • もうどちらが正統かの論争には参加しない
  • イタリアで王政復古があるとは思わない(アオスタ系の支持者団体はガックリきそうですが……
  • イタリア共和国へ忠誠を誓うことを避ける理由はない
  • 二系統(直系とアオスタ系統)はそれぞれの道を進むだけ

 といったところが今回の主な主張だと思うのですが、一方で子供たちが先祖の伝統を受け継ぐことは望んでいるように受け取れます(先祖の伝統を受け継ごうとする限り、正統論争は避けられないのでは……)。

※末尾に追加しておきますが、イタリア王室(直系)継嗣のヴェネツィア公/ピエモンテ公/サヴォイア公子エマヌエーレ・フィリベルト殿下(His Royal Highness Prince Emanuele Filiberto of Savoy, Prince of Venice and Piedmont)がこの記事についてコメントしています。

 

 (イタリア語)Aimone di Savoia-Aosta: «Per ora non alimento la polemica». Intanto è guerra di carte tra i Savoia – Corriere.it

 

Corriere della SeraさんはTwitterを使っています: 「Aimone d’Aosta: «Per ora non alimento la polemica». Intanto è guerra di carte tra i Savoia https://t.co/63dUePuzCJ」 / Twitter

 

Aimone di Savoia — Juan Carlos il suo… – Corriere della Sera | Facebook

 

エマヌエーレ・フィリベルト殿下のコメント:
「アイモーネはいいやつだが、この部分はいただけない:『王政復古は起きないだろうし、イタリア共和国へ忠誠を誓うことを避ける理由はない』。彼は彼の選択をした、しかし私はいつでも腕を広げてすべての君主政イベント(この日曜日でローマでおこなうものを含む)で彼を歓迎するつもりだ」

Aimone è una persona per bene, ma mi… – Emanuele Filiberto | Facebook

 

継嗣/