南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子が選出された件について、王室評議会の広報や、専門家、現地の人のコメント(2021年5月)

※すでにリンクした記事に書かれていることと重複してはいますが、動画があったので、それへのリンクを貼り付けつつ、いくつか追加の話題を。

 南アフリカ共和国のロベドゥ王室評議会(Royal Council)が、ロベドゥ人の君主であるモジャジ(Modjadji)または雨の女王(Rain Queen)に、レクケラ・モジャジ王子(Prince Lekukela Modjadji)を選出した件ですが、王室評議会の広報がコメントしています(動画一人目)。

 

SABC News:
The Modjadji royal family refute claims of deviating from their tradition of Balobedu queenship – YouTube

 

 要するに、「王でも問題ない」ということです。
 過去に六人の王がいたが全員雨を降らすことが出来た、と。

 ここで気になる映像ですが、石かなにかにプリントされた文字が、モジャジ王朝六人の王六人の女王がいたと示しています。

※映像を見て手で打ったので間違っている箇所があるかもしれません。また、そもそも、各王・女王には異なる表記が存在する人物がいます。

KINGS OF THE MODJADJI DYNASTY
MAKAPHIMO KHUMELONG
MOHALE TLATŠA (DZATHA)
MALATJA TLATŠA
PHETOLE TLATŠA
KHEALE LEBJENG
MOKOTO MOJIDINI

QUEENS OF THE MODJADJI DYNASTY
MODJADJI I (MASELEKWANE) 1800-1854 MOJIDINI
MODJADJI II (MASALANABO) 1854-1894 MOJIDINI
MODJADJI III (KHESETHWANE) 1894-1959 MOJIDINI
MODJADJI IV (MAKOMA) 1960-1981 KHEHLAKONI
MODJADJI V (MOKOPE) 1982-2001 KHEHLAKONI
MODJADJI VI (MAKOBO) 2001-2005 KHEHLAKONI

 モジャジ(Modjadji)は女王を示す称号のはずですが、先行する王を含めての王朝名になっています。うーん……。
 ただ、もともとのモジャジという単語自体には性を示す意味はないとの話もあります。

 六人の王には年代表記はありませんが、広報の話によれば、六人の王は1600年~1800年を統治しており、つまり200年の男王六人の統治の後に200年ほどの女王六人の統治があったということになります。

 あと、それぞれの最後の文字列はなんなのかということが気になります。
 地名と同じものもあるようですが……。
 最後の王は最初の女王の父であるはずなので、男系を示しているのかもしれません。
 過去に、六人の王の子孫が王族と認めるよう南アフリカ共和国政府に要求したという出来事があったらしいですが、その人物たちがどの王と関係あるのかという点も気になります(ほんの少しですけど)。

 

 続いて文化の専門家が、王室評議会の決定は絶対である、というようなことをコメントしている、と思います。

 ただ、そもそもこの王室評議会は、どんな人間がどのような理由で構成しているのか、まったくわからないので、誰かそこを説明してくれないと納得のしようがありません。

 

 続いて現地の人たちのコメントですが、最初の女性は「話し合うべき」というような内容。
 次の若い男性は、マサラナボ王女は地元にいない、レクケラ王子は地元にいる、ということで王子の選出を支持しているようです。
 最後の男性は、王子でも儀式には問題ないとしています。

 これだけだと、現地では王子支持派が多数ではないかと思えますが……。
 ともあれ、少なくとも王室評議会が地元民の感覚と完全に乖離しているわけではないようです。
 (どこまでが地元かという問題もありますけど)

 あと、ここで重要なことが一つあります。
 若い男性がいっている、マサラナボ王女が地元にいないというのは、今いないという意味ではなく、将来も地元に住むことがなさそうと思われているのではないかということです。
 マサラナボ王女は南アフリカ共和国与党のアフリカ民族会議(ANC)の議員のもとで地元を離れて養育されており、数年前の報道によれば医師を目指しているとのことです。
 現在16歳の同王女が医師になるにはこれからさらに10年程度はかかるでしょう。そうなると今後10年は地元に住まないことになり、さらにその後も医師になった王女が地元に戻るのかどうかも見通せません。
 そもそも医師のような専門的職業を目指す人物は、別に女王になりたくないんじゃないの、という疑問もわきます。

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子が選出された件について、テボホ・モジャジ=ケカナ王女が猛反論(2021年5月)「皆も大統領もマサラナボ王女が女王となると認めていた」「最後まで戦う」

 南アフリカ共和国のロベドゥ王室評議会が、ロベドゥ人の君主であるモジャジ(Modjadji)または雨の女王(Rain Queen)に、レクケラ・モジャジ王子(Prince Lekukela Modjadji)を選出した件、動揺がロベドゥ人のみならず、アフリカの君主の動静をうかがっている人々にも衝撃を与えています。

関連:
 南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人に衝撃。モジャジ(雨の女王)にマサラナボ王女ではなく、兄のレクケラ王子が選出(2021年5月)

 そんな中、南アフリカ共和国の放送局、 eNCA が、おそらく最有力の王族の一人テボホ・モジャジ=ケカナ王女(Princess Dr Tebogo Modjadji-Kekana)の意見を聞いたようです。
 同王女は、先代の故・女王マコボ・モジャジ6世Makobo Modjadji VI)の姉妹あるいは いとこ で、近い立場にあったようです。

 インタビューに対し、かなり興奮していますが、まとめてしまうと、そもそも女王が選ばれるのが文化的に当然で、王子ではなく妹のマサラナボ・モジャジ王女(Princess Masalanabo Modjadji)が次の女王となると皆も大統領も思っていたのだから、王子を選出する必要はまったくないと考えているようです。
※大統領はズマ前大統領でしょうか。

 インタビュワーは、初代女王の前の時代には王がいたことと、2021年のこの時代に王がダメだという理由に関して質問していますが、要するにとにかく王ではダメだということしか答えていないような……。
 もちろん、このようなタイプの質問に理由を答えるのは非常に難しい話です。
追記:
 モジャジ(雨の女王)がどのように始まったかは、はっきりしていない部分があります。

 有力王族から異論が出たことで、この件はおそらく南アフリカ共和国で伝統的君主に関しての事項を扱う CTLDC が管轄して審査することになっていくことでしょう。
 また、 CTLDC と裁判所の判断が異なる場合も多々あるので、泥沼の展開も予想されます。

 それにしてもこれもまた両性の平等が君主政の伝統に影響を与えているケースなのか。
 違うような気もしますが……。

 

eNCA:
Modjadji Royal Houses | Family Divided over installation of king – YouTube

 

 (英語)Modjadji Royal House: Family divided over installation of king | eNCA

 

続報?(2021年5月13日 20:00頃確認):
 eNCA全体の記事ランキングで3位になっていました。

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

結婚(2021年5月6日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王に指名されたミスズールー王子殿下が、指名(母・摂政マントフォンビ陛下の葬儀の日に遺書で)の前日に結婚(民事婚)していた模様。「結婚していないので王になる資格はない」との批判をかわすためか

 母であるズールー王国摂政(王妃)マントフォンビ・ドラミニ陛下(Her Majesty Queen Regent Mantfombi Dlamini)の遺書でズールー王に指名されたミスズールー・ズールー王子殿下(His Royal Highness Prince Misuzulu Zulu)、あるいはすでにズールー王ミスズールー・シンコビレ・カズウェリティニ陛下(His Majesty King Misuzulu Sinqobile kaZwelithini of Zulu)と呼んだ方がいいのかもしれませんが、ともあれ摂政の葬儀=指名の日の前日に、ントコゾ・マイイセラNtokozo Mayisela)という女性と結婚(民事婚)していたことがわかりました。

 二人の間には、9歳と3歳の王子がすでに誕生しているようです。

 

 さて、この駆け込みでの結婚は、「結婚していないので王になる資格はない」という批判をかわすためか、と思われているようです。

 そうかもしれませんが、しかしここでいくつか疑問が出ます。

 まず、「結婚していないとダメ」という批判は、ズールー王国の伝統から来るものであるはずであり、であれば(南アフリカ共和国の民事婚ではなく)ズールー王国の伝統的な結婚式をおこなわなければ条件を満たさないのではないか、ということです。

 二つ目は、そもそもそんな条件が本当にあるのか、ということです。2021年3月12日に崩御した南アフリカ共和国の伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下(His Majesty King Goodwill Zwelithini of Zulu)の後継候補としては、ミスズールー王子のほかは、第一夫人との間の子息で2020年11月に薨去したレツクツラ・ズールー王子殿下(His Royal Highness Prince Lethukuthula Zuluが挙げられ、レツクツラ殿下も結婚しているという話は出ていません。
 「結婚していないと王になれない」のに、王の後継候補二人が揃いも揃って中年~初老にもなって結婚していないということがあるのかと。

 

 ともあれ、ミスズールー陛下はさらに他に二子を儲けているようで、そのうちの一人の母親である、ムポンド人の王族であるウェジズウェ・シカウ王女(Princess Wezizwe Sigcau)と戴冠式の前に結婚するという予測があるようです。

※なお、ムポンド人の王位を争っていた人物の中にウェジズウェ・シカウWezizwe Sigcau)の名があり、こちらも王女でしょうが、別人……なんでしょう。同一人物ならさすがに記事内で言及されると思います。
関連:
 南アフリカ伝統的君主:憲法裁判所がCTLDCの判断を支持。政府はムポンド人の王をザノズコ陛下だと認める手続きを開始(2018年10月)

 他の王室出身者であるウェジズウェ王女には、結婚後に Great Wife と呼ばれる資格があり、二人の子供であるジュベジズウェニ・シカウ=ズールー王子(Prince Jubezizweni Sigcau-Zulu)をすでに将来のズールー王と見る向きもあるようです。

 

 余談ですが、行政の文書からミスズールー陛下の子供の割り出しをおこなっている人物もいるようで、南アフリカ共和国では個人情報の保護があまりされていないのではないかと思われます。

 

 (英語)Documents show new Zulu King Misuzulu got married last week
 (英語)PIC: MEET ZULU KING'S NEW MAKOTI
 (英語)King Misuzulu kaZwelithini has a bride – reports

南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人に衝撃。モジャジ(雨の女王)にマサラナボ王女ではなく、兄のレクケラ王子が選出(2021年5月)

 南アフリカ共和国のロベドゥ王室評議会は、ロベドゥ人の君主であるモジャジ(Modjadji)または雨の女王(Rain Queen)に、レクケラ・モジャジ王子(Prince Lekukela Modjadji)を選出しました。

 これはほとんど予想されていなかったことで、妹のマサラナボ・モジャジ王女(Princess Masalanabo Modjadji)がいずれは次の雨の女王となると思われており、また南アフリカ共和国政府もそのことを承認し、適切な年齢に達した段階でそうなるであろうというのが一般的な見解でした。
 また、もし対抗馬がいるとしてもこの王子ではなく、きょうだいの母である故・女王マコボ・モジャジ6世Makobo Modjadji VI)の兄で元・摂政のムパパトゥラ王子(Prince Mpapatla)の娘の王女(つまり、いとこの王女)ではないかというのが、これもまた一般的です。理由は、ムパパトゥラ王子が摂政を務めただけでなく、同王子の妻は一族(つまり王女)であるのに対し、マサラナボ王女と今回選出されたレクケラ王子の父は平民だからです。

 今回の記事の中には、「王子でも雨を降らすことができる」とのコメントもありますが、決定の理由がよくわからないところです。

 いずれにせよ、南アフリカ共和国政府およびこのような件を取り扱う CTLDC の反応が気になるところです。

追記:
 即位式は2022年10月の予定。

 

 (英語)Modjadji Rain Queen | Reign of Queens comes to an end | eNCA
 (英語)Modjadji Royal Council announces Prince Lekukela as successor of the Balobedu tribe – SABC News – Breaking news, special reports, world, business, sport coverage of all South African current events. Africa's news leader.
 (英語)Prince Lekukela Modjadji ascends to Balobedu royal family throne – instead of his sister Masalanabo | News24

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

結婚(2021年5月):南アフリカ伝統的君主/ムポンドミセ人の王 ルズコ・マティワネ 陛下が、第二夫人としてシヨンワベレ・ランガ王女(ムポンド王の一族?)と結婚

 南アフリカ共和国の伝統的君主の一人、ムポンドミセ人の王ルズコ・マティワネ陛下(Luzuko Matiwane, The King of AmaMpondomise)が、第二夫人としてシヨンワベレ・ランガ王女(Princess Siyonwabele Langa)と結婚したようです。

 同王は、(だいぶ前に確認した限りですが)南アフリカ共和国の「伝統的指導権に関する議論と主張を扱う委員会(CTLDC)」の承認を受けていなかったと思います。
 現在の状況は不明。

 同王女はムポンド王の一族という情報もありますが、ムポンド王というだけではどの王かわからないので、こちらも詳細は不明です。が、他の王族出身なので Great Wife の称号で言及されることになるでしょう。
 また、王との子供を懐妊しているようで、息子であれば王の継嗣となる可能性が高いです。

 ムポンドミセ人とムポンド人は非常に近いようで、先祖が双子という伝承もあるようです。

 

SABC News:
AmaMpondomise King Luzuko Matiwane marries a second wife – YouTube

 

 (英語)AmaMpondomise King Matiwane takes second wife, Princess Langa – SABC News – Breaking news, special reports, world, business, sport coverage of all South African current events. Africa's news leader.