複数のメディアで報道されていますが、とりあえず NHK の記事を。
皇室の公務の負担軽減で「皇女」を検討 政府 | 皇室 | NHKニュース
政府内では、結婚で皇室を離れた女性皇族に、「皇女」という呼称で、国家公務員として公務を続けてもらう案が出ています。
「皇女」という現在使用されていない称号を使用する案は、皇籍から離脱しているので、皇室典範で適用範囲が定められている内親王や女王という称号を使用するのは適当ではないという認識から来ているのでしょう。
またムチャでわかりにくいアイディア(とりわけ英訳で混乱を招く)が出てきました。
正直頭を抱えているような気分ですが、少し真面目に考えますと。
歴史的に考えて、「皇女」は(元)内親王に適用しても良いようには思いますが、(元)女王に適用するのはおかしな話ではないかと思います。ということは、政府内のこの案は、三人の内親王のみを念頭に置いているのではないかという気がします。
もっとも、すでに結婚して離脱している内親王を念頭に置いていないわけではないのかもしれませんが……。
しかし、これは現行の法規と伝統を共に満たすのは無理ではないかという気がします。
そもそも皇族でない「皇女」というのは……なんなんでしょうか。
国家公務員(当然、特別職でしょうが)ということは任命権者というものが存在しますが、いったい誰が「皇女」を任命するのか。
総理大臣かより下級の誰かが「皇女」を任命するというのはおかしな話としかいいようがありません(国家元首が歴史的称号を歴史的な家柄に授けた例は欧州にもありますが)。
天皇が任命する(いわゆる親任官)のであれば格式としては最高位になりますが、ここに来て内閣総理大臣・最高裁判所長官と同じ格式の役職が登場するのはいかがなものかという話でしょう。
また、特定の家柄の出身者のみが(特定の特殊な技能訓練を受けているわけでもなしに)特定の国家公務員の役職に就いて良いのか、という問題も出てくるでしょう。
そして「皇女」が国家公務員として創設可能ならば、他の伝統的称号もいくらでもなんでも創設可能ではないかという話です。「征夷大将軍」の復活も可能かもしれません(が、軍人なので憲法九条に抵触するかもしれません)。