英国王室のヨーク公爵アンドルー王子が、称号などをこれからは用いないと発表(2025年10月)用いなくてもこれからもヨーク公爵であり「返上」などの報道は誤り

 2025年10月17日、英国王室のヨーク公爵アンドルー王子(Prince Andrew, The Duke of York)(2022年からは殿下=His Royal Highnessを用いていない)は、これからはヨーク公爵及びその副次称号の爵位、ガーター騎士団などの騎士号や栄転をこれからは用いないことを発表しました。
 一部報道にあるような返上ではなく単にこれからは使わないということです。

 これは、せこい逃げ方をしているのではなく、爵位を返上する方法はなく、爵位の正式な(返上ではなく)剥奪をおこなう場合は、国王・枢密院・議会が動かないといけなくなるため、簡略な選択がなされているということになります。
※騎士団などについては、爵位とは別のことになるので、今後に注目です。

 

 (英語:英国王室 公式ウェブサイト)A statement by Prince Andrew | The Royal Family

Published 17 October 2025

In discussion with The King, and my immediate and wider family, we have concluded the continued accusations about me distract from the work of His Majesty and the Royal Family. I have decided, as I always have, to put my duty to my family and country first. I stand by my decision five years ago to stand back from public life.

With His Majesty’s agreement, we feel I must now go a step further. I will therefore no longer use my title or the honours which have been conferred upon me. As I have said previously, I vigorously deny the accusations against me.

 

 余談1。
 現エディンバラ公爵エドワード王子殿下の子供、ルイーズ令嬢とウェセックス伯爵ジェームスは、1917年の勅令に基づき、王女殿下・王子殿下でありますが、用いられていません。
 ヘンリー王子夫妻および二人の子供アーチー王子とリリベット王女は殿下(Royal Highness)を使用していませんが(その前から呼称の混乱がありますが)、1917年の勅令に基づけば、もちろん殿下です。

 

 余談2。
 故エリザベス2世の夫の故エディンバラ公爵フィリップ王子殿下がギリシャ王室出身(当時はギリシャ王国)で、英国帰化時にギリシャ・デンマーク王子の称号とギリシャ王位継承権を放棄したなどと書かれていることもありますが、ギリシャ王国の法律には放棄する方法はなく、英国で何をしようがフィリップ王子は生涯にわたってギリシャ・デンマーク王子です(ただし本人がどう思っていたかはわからず、英国で英国籍の人間が他国の称号を正式な場・文書で使用するには君主の許可が必要となります)。
 また、ここまでの説明に登場した、フィリップ王子の男系子孫である、アンドルー王子、エドワード王子、ヘンリー王子、ルイーズ令嬢、ウェセックス伯爵ジェームス、アーチー王子、リリベット王女は、いずれもギリシャ・デンマーク王子/王女かつ殿下である主張は潜在的には可能ですが、ギリシャはすでに王国でないため、今のところ大した問題にはなりません。
 ただ、デンマーク王室がデンマーク王子/王女の範囲を制限している一方(デンマーク女王マルグレーテ2世陛下が、次男ヨアキム王子殿下の子供たちの称号・敬称から王子/王女と殿下を取り除くことを決定、2023年1月から(2022年9月))で、旧ギリシャ王室は基本的に複合的な表記であるギリシャ・デンマーク王子/王女を使用し続けてており、儀礼的にこれが用いられているケースも多く、なんだかすっきりしない事態にはなっています。
 また、同じくデンマーク王室の分枝であるノルウェー王室の男系子孫も位置付けとしては同じであり(すでに用いてはいませんが)、ノルウェー王位継承はイングリッド・アレクサンドラ王女殿下の次は男系が切り替わりますが、弟のスヴェレ・マグヌス王子殿下の男系子孫はノルウェーの称号を失ってもデンマーク王子/王女の称号を称する可能性が潜在的には可能です。

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