南アフリカ共和国クワズールー=ナタル州政府が、ズールー王位の争いに関して、大統領の介入を要請することを決定(2021年8月)

 2021年8月25日、南アフリカ共和国のクワズールー=ナタル州政府は、ズールー王位の争いに関して、南アフリカ共和国大統領マタメーラ・シリル・ラマポーザ閣下(Matamela Cyril Ramaphosa)の介入を要請することを決定したようです。

 

 (英語:クワズールー=ナタル州 公式サイト)KZNONLINE: Your Government – at the click of a button. – Statement Following Meeting Of The KwaZulu-Natal Provincial Executive Council Sitting

2. UPDATE ON THE ZULU ROYAL FAMILY MATTERS
The Provincial Executive Council received an update on the progress with regard to the dispute over the kingship of the Zulu Royal Family.
The Executive Council supports all efforts of government to resolve the matter as soon as possible. The matter of the Zulu Royal family is now being handled in line with the provisions of the Traditional and Khoi-San Leadership Act No. 3 of 2019.
In terms of this Act, matters related to disputes in the case of a King, Queen, Kingship or Queenship, must be dealt with by the President of the Republic of South Africa.
The President has duly delegated this function to the Minister of Cooperative Governance and Traditional Affairs, Dr Nkosazana Dlamini-Zuma.

 出されている文章によると、2019年の法により、王、女王、王位、女王位に関する争いについては大統領が取り扱うことになっていることと、ンコサザナ・クラリス・ドラミニ=ズマ共生・伝統担当大臣が職掌を委ねられていることが書かれています。
 具体的にこれからどうなるのかわかりませんが……。

 

 とりあえずここまでの経緯を簡単に書くと、

 まず、本年3月12日にズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下が崩御します。
 訃報(2021年3月12日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下が崩御(1948~2021)

 続いて、摂政となっていた第三王妃のマントフォンビ陛下も崩御。
 訃報(2021年4月29日?):南アフリカ伝統的君主/ズールー摂政(王妃)マントフォンビ陛下が崩御(1953~2021)ズールー王の崩御の翌月。南ア大統領は弔意を表明。エスワティニ王(スワジランド王)ムスワティ3世陛下の姉

 そして二人の子供のミスズールー陛下が王になります。
 崩御した南アフリカ伝統的君主/ズールー摂政(王妃)マントフォンビ陛下の遺書が読み上げられ、子息のミスズールー・ズールー王子殿下がズールー王に指名される(2021年5月)

 現在の“ズールー問題”は三つにわかれていますが、一つはミスズールー陛下の継承は無効とし、他の王子が王位を継承するべきとするものです。

※当面のところミスズールー陛下としますが、大統領なり大臣なりによって遡って継承が無効とされる可能性もあります。

 これまで(他の)有力候補として挙げられているのが、故・グッドウィル陛下の庶子(婚外子)ながら最年長の男子らしいシマカデ王子(Prince Simakade)です。
 この王子を支持しているのが、テンビ・ズールー=ンドロヴ王女(Princess Thembi Zulu-Ndlovu)とムボニシ・ズールー王子(Prince Mbonisi Zulu)ですが、この二人がどれくらいの有力者なのかはよくわかりません。
 また、シマカデ王子の母親や一族もよくわからないのと、他に王の候補となる王子はいないのかどうかもよくわかりません。
 ただ、一度はミスズールー陛下に予算額を提示したクワズールー=ナタル州政府が大統領の介入を要請したということは、このままでは収拾がつかないと判断したのでしょう。

 

 上記の問題とは独立していますが、二つ目の問題は、故・グッドウィル陛下と王妃の中で唯一民事婚の関係にあったらしい第一王妃シボンギレ・マドラミニ陛下が、遺産の半分を要求していること。
 これに関して、ミスズールー陛下は亡夫と第一王妃の民事婚を無効にするよう法的手続きを開始したという話が出ています。
 南アフリカ伝統的君主:ズールー王ミスズールー陛下が、亡父とその第一王妃の結婚を無効とするよう法的措置を開始した模様(2021年7月)

 三つめは、第一王妃の二人の娘、ンタンドイェンコシ・ズールー王女(Princess Ntandoyenkosi Zulu)とントンビゾスス・ズールー=ドゥマ王女(Princess Ntombizosuthu Zulu-Duma)が、故グッドウィル陛下の遺言に改竄があったと主張しているものです。故マントフォンビ陛下が摂政となったのは、この改竄によるものだとの主張ですが、これの目的というか動機はよくわかりません。

南アフリカ伝統的君主:モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下を選出した王室評議会に対し、将来的に女王になると大統領らから認められていた妹のマサラナボ王女殿下の弁護士が提訴の意向(2021年5月)

 南アフリカ共和国のロベドゥ人の君主であるモジャジ(Modjadji)または雨の女王(Rain Queen)に、ロベドゥ王室評議会(Royal Council)がレクケラ・モジャジ王子殿下(His Royal Highness Prince Lekukela Modjadji)を選出した件、妹で雨の女王の後継として大統領・政府らにも認められていたマサラナボ王女殿下(Her Royal Highness Princess Masalanabo)の代理人の弁護士が王室評議会の決定を無効として提訴するそうです。

 伝統やらなんやらの話はともかくとしても、大統領や政府が認めたことを一方的に否定した王室評議会の決定は、「伝統的指導権と政府の間の枠組みに関する法律」に違反しているんじゃないかと思うので、王室評議会はあっさり負ける可能性もあると思います(ロベドゥ人の伝統がどうあれ、彼らは南アフリカ共和国のルールに従う義務があるというか、従わされます)。が、王室評議会のほうも弁護士がいるようなので、伝統以外のことで何か理論武装してくるのかもしれません。

 これでようやく争いが始まるわけですが、それはそれとしてほかにも注目することがあります。
 一つ目は、シリル・ラマポーザ大統領をはじめとする政府・政権・与党政治家らが直接動くのか、とりあえず訴訟を見守るのかということ。
 二つ目として、テボホ・モジャジ=ケカナ王女(Princess Dr Tebogo Modjadji-Kekana)と称している/呼ばれている人物は結局のところモジャジとは関係があるのかないのかという割と重要な問題が一つ。今、世に出ている雨の女王に関する情報のある程度は、この人やこの人の支持者から来ているのではと思われるフシがあるので、この人が信頼できない人物だとすると、王室評議会の主張以外の伝統や歴史(割と最近まで)に関する話はどこまで信頼できるのかという疑問がわきます。
 そのほか、ネット署名でマサラナボ女王支持を訴えていた人がいます。こちらはンコサザナ・クラリス・ドラミニ=ズマ共生・伝統担当大臣らに彼ら(か彼女らかわかりませんが)の要望を提出するという予定でしたが、せんだっての王室評議会の記者会見や、それに続く王女の代理人による提訴を受けて、予定を変えるかもしれません。

 

※なお、多忙のため、この話を最後まで追えるかわかりません。英語では普通に情報が出てくると思うので、ものすごく興味がある方は直接そちらはどうぞ。

 

 (英語)Modjadji queenship dispute heads to court

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事

葬儀(2021年3月18日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下の葬儀がおこなわれる。南アフリカ大統領シリル・ラマポーザ閣下、モナコ公妃シャルレーヌ殿下らが参列

 2021年3月18日、3月12日に崩御した南アフリカ共和国の伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下(His Majesty King Goodwill Zwelithini of Zulu)の葬儀がおこなわれています。

 ズールーの王族や、南アフリカ共和国大統領マタメーラ・シリル・ラマポーザ閣下(Matamela Cyril Ramaphosa)ら同国の要人、ズールー王国の首相的立場にあるブテレジ氏族長マンゴスツ・ブテレジ王子(Prince Mangosuthu Buthelezi, Inkosi of the Buthelezi clan)らズールー王国関係者、モナコ公妃シャルレーヌ殿下(Her Serene Highness Princess Charlene of Monaco)らが参列しているようです。

 

 (英語)Princess Charlene says goodbye to Zulu King Goodwill Zwelithini

Princess Charlene of Monaco Foundation SAfricaさんはTwitterを使っています 「Joining the nation in mourning the loss of His Majesty King Goodwill Zwelithini as he is laid to rest today, Her Serene Highness Princess Charlene of Monaco flew in to attend the funeral. The Foundation wishes to convey our condolences to King Goodwill's family and friends. https://t.co/mfO7wbRpyC」 / Twitter

 

追記:
 (英語【スピーチ内容にズールー語を含む】:南アフリカ共和国大統領府 公式サイト)Eulogy by President Cyril Ramaphosa at the Special Official Memorial Service of Isilo Samabandla His Majesty King Goodwill Zwelithini KaBhekuzulu | The Presidency
 参列者が記載されているので追加しておきます。

Minister Dr Nkaosazana Dlamini Zuma

ンコサザナ・クラリス・ドラミニ=ズマ博士閣下(ズマ元大統領の元妻で、現在伝統的君主に関わる分野を担当する大臣)

Jacob Nxamalala Zuma

ジェイコブ・ズマ元大統領(Nxamalala は出身地みたいですが、名前のように使われる理由は不明)

Your Majesties Kings and Queens from all over the country, the continent and other parts of the world,
Especially Nkosi ya Makhosi Mbelwa from Malawi,

 国中・アフリカ大陸・世界のその他の地域からの王・王妃、特にマラウイ共和国の伝統的君主/ジェレ・ンゴニの大首長ムムベルワ5世陛下(His Royal Majesty Inkosi ya Makhosi M’mbelwa V)の名前が挙げられています。

Your Eminence Archbishop Thabo Makgoba

 キリスト教/アングリカン・コミュニオンの南部アフリカ聖公会ケープタウン大主教タボ・マゴバ座下(The Most Reverend【His Eminence】 Dr Thabo Makgoba, Archbishop of Cape Town, Primate of the Anglican Church of Southern Africa)

Chairperson of the National House of Traditional Leaders, Inkosi Mahlangu,
Chairperson of the Provincial House of Traditional Leaders, Inkosi Chiliza and Deputy Chairperson Inkosi Zulu,
President of Contralesa, Kgoshi Mokoena

 この辺りは伝統的君主絡みですが、称号のみに思えます。

 (英語)South Africa's Zulu king is buried amid praise, controversy – Delta Optimist
 (英語)S.Africa's Ramaphosa leads tributes to late Zulu king – France 24

 (英語)Memorial Funeral service of King Goodwill Zwelithini kaBhekuzulu of Zulu, South Africa – THE AFRICAN ROYAL FAMILIES

 

ライブ映像/
SABC News:
Memorial Service for AmaZulu King Goodwill Zwelithini kaBhekuzulu – YouTube

 

ライブ映像/
The Presidency of the Republic of South Africa(南アフリカ共和国大統領府 公式チャンネル):
President Ramaphosa delivers the eulogy at the Funeral of the late King Goodwill Zwelithini – YouTube

 

大統領がマンゴスツ・ブテレジ王子やクワズールー=ナタール州知事らの出迎えを受ける:
Presidency | South Africa 🇿🇦さんはTwitterを使っています 「President @CyrilRamaphosa arrives KwaKhethomthandayo Royal Palace for the Special Official Funeral of His Majesty King Goodwill Zwelithini KaBhekuzulu. The President is received by KZN Premier Sihle Zikalala and Prince Mangosuthu Buthelezi Prime Minister of the Zulu Kingdom. https://t.co/Ws4ZWbWPhF」 / Twitter

 

Presidency | South Africa 🇿🇦さんはTwitterを使っています 「[PHOTOS]: President @CyrilRamaphosa at the Special Official Funeral of the late His Majesty King Goodwill Zwelithini KaBhekuzulu. The President is accompanied by KwaZulu-Natal Premier Sihle Zikalala and Prince Mangosuthu Buthelezi Prime Minister of the Zulu Kingdom. https://t.co/mqt7XbpAFQ」 / Twitter

 

Presidency | South Africa 🇿🇦さんはTwitterを使っています 「[PROGRAMME]: Special Official Funeral Service for His Majesty King Goodwill Zwelithini KaBhekuzulu #RIPKingGoodwillZwelithini 🕊 https://t.co/hxi1lTuziI」 / Twitter

 

Presidency | South Africa 🇿🇦さんはTwitterを使っています 「[PROGRAMME]: Special Official Funeral Service for His Majesty King Goodwill Zwelithini KaBhekuzulu #RIPKingGoodwillZwelithini 🕊 https://t.co/Dt9VkfMx8m」 / Twitter