ナイジェリア伝統的君主:オヨ王国の九つの王家の王子らが、州知事が新たなオヨ王にアビンボラ・アキーム・オウォアデ王子を承認したことに反対を表明(2025年1月)

 ナイジェリア連邦共和国のオヨ州知事セイ・マキンデ閣下(His Excellency Seyi Makinde)によってアビンボラ・アキーム・オウォアデ王子(Prince Abimbola Akeem Owoade)が新たなオヨ王(Alaafin of Oyo)に承認されましたが、この動きに対し、オヨの九つの王家(The Atiba 9)の九人の王子らが反対を表明しています。

 シナ・アフォラビ王子ら九人は、選出を最初からやり直すように求めています。

 彼らが重要な間違いとしていることの一つは、イペビ(Ipebi)と呼ばれる、人を避けて一ヶ月ほど隠棲するという伝統的儀礼をおこなう前にオヨ王として宣言されたことのようですが、これはそれがどこまで重要なのかは部外者にはよくわからないところです(なお、オヨに到着したアビンボラ・アキーム・オウォアデ王子はこれからイペビに入るようです)。

 なお、九人の王子らは、枢密院(Oyomesi)の多数派が支持しているらしい、ルクマン・アデロドゥン・グバデゲシン王子(Prince Lukman Adelodun Gbadegesin)も支持しておらず、両王子を候補として選出したプロセスそのものそれぞれに異議を唱える訴訟を準備しているようです。

 九人の王子らが、九王家全体をどれだけ代表しているかはわかりませんし、オヨ王の候補となっている二人がこのうちのどの家に所属しているのかもわかりません(アビンボラ・アキーム・オウォアデ王子が所属するとされる家は九つの中には見当たりません)。

 

 (英語)Alaafin: Oyo royal families reject Prince Owoade as new monarch – The Nation Newspaper
 (英語)9 royal families fault Alaafin's appointment – Vanguard News

 

 九人の王子は、
 シナ・アフォラビ王子(Prince Sina Afolabi : アデイタン家 : Adeitan)
 レミ・アジーズ王子(Prince Remi Azeez : テラ・オキティパパ家 : Tella Okitipapa)
 ラモラ・オラニテ王子(Prince Lamola Olanite : オラニテ家 : Olanite)
 アグボイン・アデラブ王子(Prince Agboin Adelabu : アデラブ家 : Adelabu)
 ラジ・アデニラン王子(Prince Raji Adeniran : アデニラン家 : Adeniran)
 ヌレニ・タイウォ王子(Prince Nureni Taiwo : テラ・アグボジュログン家 : Tella Agbojulogun)
 ムフタウ・アデジャレ・アデソカン王子(Prince Muftau Adejare Adesokan : アデソカン・ババ・イドデ家 : Adesokan Baba Idode)
 アデシヤン王子(Prince Adesiyan : アデシヤン家 : Adesiyan)
 ベロ・ラシード王子(Prince Bello Rasheed : アビデクン家 : Abidekun)
※個人名と家名が同一の人物もいますが、記事の通りに引用しておきます。

ナイジェリア伝統的君主:オヨ州知事によってオヨ王に承認されたアビンボラ・アキーム・オウォアデ王子がオヨに到着する(2025年1月)

 ナイジェリア連邦共和国のオヨ州知事セイ・マキンデ閣下(His Excellency Seyi Makinde)によってオヨ王(Alaafin of Oyo)に承認されたアビンボラ・アキーム・オウォアデ王子(Prince Abimbola Akeem Owoade)が、オヨに到着したと報道されています。

 同王子は、これから約一ヶ月、人を避けて隠棲するという伝統的儀礼をおこない、その後に戴冠式がおこなわれるようです。

 

 (英語)Alaafin-designate Owoade arrives Oyo, begins traditional rites [VIDEO] – Daily Post Nigeria

Daily Post Nigeria:
Alaafin-designate Owoade arrives Oyo, begins traditional rites – YouTube

 

 また、こちらの記事によると、マキンデ州知事より、伝統的君主として承認する証明書を受け取ったようです。

 (英語)Makinde presents staff of office to new Alaafin [Photos] – Vanguard News

 

 こちらの記事では、(記事本題とは関係ありませんが)、新オヨ王の敬称に His Imperial Majesty が使われています。

 (英語)Ologburo Rallies Support for New Alaafin, Oba Akeem Owoade, Hails Gov. Makinde – National Insight News

the new Alaafin of Oyo, His Imperial Majesty, Oba Akeem Abimbola Owoade

ナイジェリア伝統的君主:オヨ州知事が、新たなオヨ王に アビンボラ・アキーム・オウォアデ王子 を承認したと発表される(2025年1月)オヨの高位首長らの中に反発の動き

 2025年1月10日、ナイジェリア連邦共和国のオヨ州知事セイ・マキンデ閣下(His Excellency Seyi Makinde)は、ナイジェリア伝統的君主の中でも有力な君主の一人オヨ王に、アビンボラ・アキーム・オウォアデ王子(Prince Abimbola Akeem Owoade)を承認したと発表されました。

 やや唐突な発表です。

 

 (英語:ナイジェリア連邦情報省)New Alaafin of Oyo has just been appointed by the Governor of Oyo State, Engr. Seyi Makinde – Federal Ministry of Information and National Orientation

In the statement signed by the Commissioner for Information and Orientation, Prince Dotun Oyelade, the Oyo State government said that after thorough consultations and divinations, Prince Abimbola Akeem Owoade has been recommended by the Oyomesi and approved by the Governor of Oyo State.

連邦情報省の理事ドトゥン・オイェラデ王子(Prince Dotun Oyelade)の署名による、アビンボラ・アキーム・オウォアデ王子がオヨ州知事にオヨ王として承認されたとする声明が出た、ようです(追記:枢密院である Oyomesi によって推薦されたとも書いてありますが、下記のように反対があります)。

 

 2022年4月の前・オヨ王崩御から年月が経過しています。
関連:
 訃報(2022年4月22日):ナイジェリア伝統的君主/オヨ王 ラミディ・オライウォラ・アデイェミ3世 陛下が崩御(1938~2022)

 

 オヨ王の選出は、複数の系統から選ばれるものです。

 オヨ王国の枢密院(Oyomesi : Oyo Mesi)は、候補としてルクマン・アデロドゥン・グバデゲシン王子(Prince Lukman Adelodun Gbadegesin)という人物を選出し、すでにある程度の期間が経過していたようですが、この人物に金銭トラブルや(オヨ王選出を意図して高位首長らへの)贈賄疑惑があり、(それが理由かはわかりませんが)オヨ州知事の承認は得られていませんでした。

 枢密院の7人の高位首長のうち、伝統的宰相ユスフ・アキナデ閣下(His Supernal Highness High Chief Yusuf Akinade, Basorun【Bashorun】 of Oyo)ら5人が今回の決定を支持していないようです。

 

 (英語)Prince Abimbola Owoade Emerges New Alaafin Of Oyo – The Whistler Newspaper
 (英語)Makinde appoints Abimbola Owoade as Alaafin of Oyo – Vanguard News
 (英語)JUST IN…. New Alaafin Oyo emerged, Prince Akeem Owoade | Royal News
 (英語)Seyi Makinde names Abimbola Owoade as Alaafin of Oyo | TheCable
 (英語)Who is Prince Abimbola Owoade? The new Alaafin of Oyo – Businessday NG
 (英語)FLASHBACK: Prince Gbadegesin Was Oyomesi's Favourite Alaafin Candidate, Then EFCC Found Bribery Scandal
 (英語)Oyo kingmakers reject Owoade's appointment as Alaafin  – Daily Trust
 (英語)Kingmakers reject appointment of new Alaafin, call decision unlawful

 (ピジン英語)Prince Abimbola Owoade: Governor Seyi Makinde confam appointment of new Alaafin of Oyo – BBC News Pidgin

 

XユーザーのTheCableさん: 「Oyo kingmakers write Makinde, reject Abimbola Owoade's appointment as Alaafin | TheCable https://t.co/9Q2HYn37xF https://t.co/CnVNXtBG3S」 / X

 

続報:
 ナイジェリア伝統的君主:オヨ州知事によってオヨ王に承認されたアビンボラ・アキーム・オウォアデ王子がオヨに到着する(2025年1月)

ナイジェリア伝統的君主:ラゴス王リルワン・アキオル陛下が、ナイジェリア大統領ボラ・ティヌブ閣下の訪問を受ける(2025年1月)

 2025年1月3日、ナイジェリア連邦共和国の伝統的君主の一人、ラゴス王リルワン・アキオル陛下(His Royal Majesty Oba Rilwan Akiolu, The Oba of Lagos)は、ナイジェリア連邦共和国大統領ボラ・アハメド・ティヌブ首長閣下(His Excellency Asiwaju Bola Ahmed Tinubu GCFR, Asiwaju of Lagos, Jagaba of Borgu)の公式訪問を受けました。

 ティヌブ大統領は、ラゴス王より、王の麾下の首長の称号のひとつである Asiwaju に叙されているようです。

 

 (英語)Tinubu Visits Oba Of Lagos, Seeks Partnership With Traditional Rulers • Channels Television
 (英語)Tinubu seeks traditional rulers' support — News — The Guardian Nigeria News – Nigeria and World News

 

XユーザーのPresidency Nigeriaさん: 「President Bola Tinubu paid a visit to the Oba of Lagos, His Majesty Rilwan Akiolu, at the Iga Idunganran palace in Lagos Island today https://t.co/kFrRNYKtIm」 / X

 

XユーザーのBola Ahmed Tinubuさん: 「Today, I had the honour of visiting His Majesty, Oba Rilwan Akiolu of Lagos, at the historic Iga Idunganran Palace, a site rich in culture and tradition. During my visit, Kabiyesi and I engaged in meaningful conversations about the role traditional institutions play in shaping https://t.co/vn452Qz701」 / X

記事(英語):ナイジェリアで最も強力な王たち トップ10(2022年9月)

 定期的に見かけるタイプの記事ですが、ナイジェリア連邦共和国で最も影響力のある伝統的君主を10人挙げています。

 

 (英語)Most Powerful Kings in Nigeria (With Pictures): Top 10 – Bscholarly

 

 10人は、

1. Alaafin of Oyo
2. Emir of Kano
3. Sultan of Sokoto
4. Ooni of Ile-Ife:
5. Dein of Agbor
6. Oba of Benin
7. Oba of Lagos
8. Obi of Onitsha
9. Olu of Warri
10. Olubadan of Ibadan

 となっており、

  1. オヨ王
  2. カノ首長
  3. ソコトのスルタン
  4. (イレ=)イフェ王
  5. アグボー王
  6. ベニン王
  7. ラゴス王
  8. オニチャ王
  9. ワリ王
  10. イバダン王

 いずれも記事などで動静がよく報じられる人物たちです(オヨ王は2022年4月に崩御し、空位)。

 1.のオヨ王と、4.のイフェ王は、ヨルバ系の二大君主です。歴史的にもあまり仲がよろしくありません。
 7.のラゴス王、10.のイバダン王もヨルバ系なので、このトップ10ではヨルバ系君主が4人ということになります。イバダン王は最近崩御があり、先代王と確執・騒動があった人物が新たに王となっています。

 2.のカノ首長は、北部イスラム圏ではナンバー2の君主です。
 大きな影響力を誇った先々代のアド・バイエロの薨去後、長男のサヌシ・アド・バイエロではなく、ムハンマド・サヌシ2世(ジョナサン大統領(当時)と対立した中央銀行総裁(当時))が政治的なバランスも考慮されて州知事から指名されていました。
 しかし結局、廃位され、アド・バイエロの次男(?)のアミヌ・アド・バイエロ(ビチ首長という新設の首長になっていた)が継承しています。ビチ首長自体は弟のナシル・アド・バイエロが継承。
 また先述のサヌシ・アド・バイエロは首長位につけておらず、弟の即位後に評議会のメンバーに選出されていますが、将来の継承に影響が出るのかどうかはわかりません。

 3.のソコトのスルタンは、北部イスラム圏でナンバー1の権威の君主です。
 ナイジェリアからのマッカ(メッカ)巡礼を率いる役割を毎年のように大統領から打診されていますが、これが伝統なのかどうかはよくわかりません。

 5.のアグボー王は、(Dein of Agbor)という称号を用いますが、州の伝統的君主の評議会がこの称号を取り消して他の君主らと同じようなものにしようとした結果、抗議活動が起こったりするなどの出来事がありました。

 6.ベニン王、8.オニチャ王に比べると、9.ワリ王の知名度は低かったように思いますが、昨年の戴冠式に大統領経験者やイフェ王の訪問があったり、関連してベニン王との歴史的つながりがあらためて示されたりということがありました。