南アフリカ伝統的君主:ズールー王 ミスズールー 陛下が、ナザレス・バプテスト・チャーチの洗礼を受ける(2024年6月)

 2024年6月9日、南アフリカ共和国の伝統的君主の一人、ズールー王ミスズールー・シンコビレ・カズウェリティニ陛下(His Majesty King Misuzulu Sinqobile kaZwelithini of Zulu)は、同地の宗教であるナザレス・バプテスト・チャーチ(Nazareth Baptist Church : シェンベ教会 : Shembe Church)の洗礼を受けたようです。

※この教会は、一般的な意味でのバプテストやキリスト教とは異なります。

 ズールー王は、アングリカン(南部アフリカ聖公会)の一員であったはずですが、離脱しているようです。
 ズールー王国宰相のトゥラシズウェ・ブテレジ閣下(The Reverend Thulasizwe Buthelezi)は、王の洗礼は王を聖化することであり、異母兄との王位の争いが今回の洗礼の背景にあるとしているようです。
 一方、シンフィウェ・ズールー王子(Prince Simphiwe Zulu)は、王の洗礼が公開でおこなわれたのは歴史的瞬間としつつも、王位の問題とは異なる領域のものとしています。

 

Newslive SA:
King Misuzulu KaZwelithini Baptized into the Shembe Church by uNyazi LweZulu – YouTube

 

 (英語)King Misuzulu ditches the Anglican Church for Shembe | Scrolla.Africa
 (英語)Zulu king baptised as Shembe church member

訃報(2022年11月24日?):南アフリカ伝統的君主/ズールー王の即位に貢献したムボンギセニ王子が暗殺される。王の側近暗殺はこの三ヶ月で三人目の模様

 南アフリカ共和国の伝統的君主であるズールー王の一族で側近の、ムボンギセニ・ズールー王子(Prince Mbongiseni Zulu)が暗殺されたと報道されています。
 インカタ自由党(IFP)所属で南アフリカ共和国議会の議員も務めていたことがあるようです。

 

 (英語)Police probe murder of Prince Mbongiseni Zulu | eNCA

eNCAさんはTwitterを使っています: 「Police probe murder of Prince Mbongiseni Zulu https://t.co/3IhoqD8yrY」 / Twitter

 

 (英語)Senior Zulu Prince close to King Misuzulu KaZwelithini assassinated in Nongoma

IOL NewsさんはTwitterを使っています: 「Senior Zulu Prince close to King Misuzulu KaZwelithini assassinated in Nongoma https://t.co/hzMAT0r0yP」 / Twitter

 

 (英語)Zulu adviser who helped King Misuzulu ascend to throne shot dead

Times LIVEさんはTwitterを使っています: 「Police have been urged to speedily investigate after a senior member of the Zulu royal family close to King Misuzulu KaZwelithini was assassinated. https://t.co/OUVSgOvvYB」 / Twitter

 

 南アフリカ共和国の伝統的君主であるズールー王には、ミスズールー陛下が先月戴冠、戴冠式に参列したラマポーザ大統領より王位の承認証明書も手渡されていました。

関連:
 戴冠式(2022年10月29日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王ミスズールー陛下の戴冠式。4万人。大統領・州首相・エスワティニ王(スワジランド王)ムスワティ3世陛下・ケープタウン大主教らが参列

 一方、先代の王の庶長子らしい、シマカデ・ズールー王子(Prince Simakade Zulu)という人物が、自分こそ正統な継承者と主張するなど、ミスズールー陛下の戴冠までにいろいろとあり、ムボンギセニ王子らの即位に向けた尽力があったということです(なお争いは継続中)。

 また、9月と10月にも王の側近が暗殺されているようです。

南アフリカ共和国クワズールー=ナタル州政府が、ズールー王位の争いに関して、大統領の介入を要請することを決定(2021年8月)

 2021年8月25日、南アフリカ共和国のクワズールー=ナタル州政府は、ズールー王位の争いに関して、南アフリカ共和国大統領マタメーラ・シリル・ラマポーザ閣下(Matamela Cyril Ramaphosa)の介入を要請することを決定したようです。

 

 (英語:クワズールー=ナタル州 公式サイト)KZNONLINE: Your Government – at the click of a button. – Statement Following Meeting Of The KwaZulu-Natal Provincial Executive Council Sitting

2. UPDATE ON THE ZULU ROYAL FAMILY MATTERS
The Provincial Executive Council received an update on the progress with regard to the dispute over the kingship of the Zulu Royal Family.
The Executive Council supports all efforts of government to resolve the matter as soon as possible. The matter of the Zulu Royal family is now being handled in line with the provisions of the Traditional and Khoi-San Leadership Act No. 3 of 2019.
In terms of this Act, matters related to disputes in the case of a King, Queen, Kingship or Queenship, must be dealt with by the President of the Republic of South Africa.
The President has duly delegated this function to the Minister of Cooperative Governance and Traditional Affairs, Dr Nkosazana Dlamini-Zuma.

 出されている文章によると、2019年の法により、王、女王、王位、女王位に関する争いについては大統領が取り扱うことになっていることと、ンコサザナ・クラリス・ドラミニ=ズマ共生・伝統担当大臣が職掌を委ねられていることが書かれています。
 具体的にこれからどうなるのかわかりませんが……。

 

 とりあえずここまでの経緯を簡単に書くと、

 まず、本年3月12日にズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下が崩御します。
 訃報(2021年3月12日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下が崩御(1948~2021)

 続いて、摂政となっていた第三王妃のマントフォンビ陛下も崩御。
 訃報(2021年4月29日?):南アフリカ伝統的君主/ズールー摂政(王妃)マントフォンビ陛下が崩御(1953~2021)ズールー王の崩御の翌月。南ア大統領は弔意を表明。エスワティニ王(スワジランド王)ムスワティ3世陛下の姉

 そして二人の子供のミスズールー陛下が王になります。
 崩御した南アフリカ伝統的君主/ズールー摂政(王妃)マントフォンビ陛下の遺書が読み上げられ、子息のミスズールー・ズールー王子殿下がズールー王に指名される(2021年5月)

 現在の“ズールー問題”は三つにわかれていますが、一つはミスズールー陛下の継承は無効とし、他の王子が王位を継承するべきとするものです。

※当面のところミスズールー陛下としますが、大統領なり大臣なりによって遡って継承が無効とされる可能性もあります。

 これまで(他の)有力候補として挙げられているのが、故・グッドウィル陛下の庶子(婚外子)ながら最年長の男子らしいシマカデ王子(Prince Simakade)です。
 この王子を支持しているのが、テンビ・ズールー=ンドロヴ王女(Princess Thembi Zulu-Ndlovu)とムボニシ・ズールー王子(Prince Mbonisi Zulu)ですが、この二人がどれくらいの有力者なのかはよくわかりません。
 また、シマカデ王子の母親や一族もよくわからないのと、他に王の候補となる王子はいないのかどうかもよくわかりません。
 ただ、一度はミスズールー陛下に予算額を提示したクワズールー=ナタル州政府が大統領の介入を要請したということは、このままでは収拾がつかないと判断したのでしょう。

 

 上記の問題とは独立していますが、二つ目の問題は、故・グッドウィル陛下と王妃の中で唯一民事婚の関係にあったらしい第一王妃シボンギレ・マドラミニ陛下が、遺産の半分を要求していること。
 これに関して、ミスズールー陛下は亡夫と第一王妃の民事婚を無効にするよう法的手続きを開始したという話が出ています。
 南アフリカ伝統的君主:ズールー王ミスズールー陛下が、亡父とその第一王妃の結婚を無効とするよう法的措置を開始した模様(2021年7月)

 三つめは、第一王妃の二人の娘、ンタンドイェンコシ・ズールー王女(Princess Ntandoyenkosi Zulu)とントンビゾスス・ズールー=ドゥマ王女(Princess Ntombizosuthu Zulu-Duma)が、故グッドウィル陛下の遺言に改竄があったと主張しているものです。故マントフォンビ陛下が摂政となったのは、この改竄によるものだとの主張ですが、これの目的というか動機はよくわかりません。