南アフリカ伝統的君主:ズールー王ミスズールー陛下が、亡父とその第一王妃の結婚を無効とするよう法的措置を開始した模様(2021年7月)

 南アフリカ伝統的君主の一人、ズールー王ミスズールー・シンコビレ・カズウェリティニ陛下(His Majesty King Misuzulu Sinqobile kaZwelithini of Zulu)は、亡父グッドウィル・ズウェリティニ陛下とその第一王妃シボンギレ・マドラミニ陛下(Her Majesty Queen Sibongile MaDlamini)の結婚を無効とするよう法的手続きを開始したようです。

 

 (英語)Zulu King Misuzulu in legal bid to nullify his father's marriage to first wife

 

 なにをどうすれば無効にできるのかさっぱりわかりませんが、ここまでの経緯を整理しておきます。

 まず、本年3月12日にグッドウィル・ズウェリティニ陛下が崩御します。
 訃報(2021年3月12日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下が崩御(1948~2021)

 続いて、摂政となっていた第三王妃のマントフォンビ陛下も崩御。
 訃報(2021年4月29日?):南アフリカ伝統的君主/ズールー摂政(王妃)マントフォンビ陛下が崩御(1953~2021)ズールー王の崩御の翌月。南ア大統領は弔意を表明。エスワティニ王(スワジランド王)ムスワティ3世陛下の姉

 そして二人の子供のミスズールー陛下が王になります。
 崩御した南アフリカ伝統的君主/ズールー摂政(王妃)マントフォンビ陛下の遺書が読み上げられ、子息のミスズールー・ズールー王子殿下がズールー王に指名される(2021年5月)

 これに対し、第一王妃のシボンギレ・マドラミニ陛下が、王の選出が適切におこなわれなかったことと、民事婚上の妻が自分ひとりであることからズールー王の遺産の半分を要求します。
 南アフリカ伝統的君主:崩御したズールー王の第一王妃と娘の王女たちが提訴をおこなった模様(2021年5月?)南アフリカ共和国では慣習的な一夫多妻は容認されているものの、民事婚は認めていないため、第一王妃のみが法律上の妻との主張など

 以上の経緯からすると、今回、ミスズールー陛下が、亡父とその第一王妃の結婚を無効にするよう法的手続きを開始したのは、この民事婚を有効としてしまうと遺産の半分を持っていかれるのは避けられないという結論からではないかとも思われますが……。
 しかし、50年以上前の結婚を無効にするというのが可能なのかどうか、大いに疑問がわくところです。
※それ以前に、いろいろと妙な話だなあ、という感がぬぐえませんが。

 これに加え、南アフリカ共和国全域での騒乱と、エスワティニ王国(スワジランド王国)での騒乱がズールーへの影響を与えるでしょう。
 ミスズールー陛下は母方からエスワティニ王ムスワティ3世陛下の甥であり、ざっくり言ってしまえば、ムスワティ3世陛下が国内を収めきればミスズールー陛下に有利であり、逆であれば不利になるということです。
 南アフリカ共和国の役所や裁判所の判断如何では、暴動が発生する可能性も高く、クワズールー・ナタール州はひりひりした状況が続きそうです。

※なお、同州政府はすでにミスズールー陛下に、文化的保護のための予算額を提示しており、同陛下が王だと認めています。
続報:
 南アフリカ共和国クワズールー=ナタル州政府が、ズールー王位の争いに関して、大統領の介入を要請することを決定(2021年8月)

訃報(2021年6月24日):ニジェール伝統的君主/カツィナ(=マラディ)のスルタン、アリー・ザキが崩御(1939~2021)

 2021年6月24日、カツィナ(=マラディ)のスルタン、アリー・ザキ(The Honorable Sultan of Katsina / Maradi, Ali Zaki)が崩御したとニジェール共和国のメディアが報じています。
 1939年生まれの82歳(ただしどの月の生まれか表記されていないため、81歳の可能性があります)。

 

 (フランス語)Décès ce jour 24 juin du sultan Ali Zaki de Katsina, Maradi à 82 ans  (gouverneur) | Agence Nigérienne de Presse
 (フランス語)Maradi : obsèques officielles ce vendredi du sultan du Katsina, Ali Zaki | ActuNiger

 

 カツィナはナイジェリア連邦共和国、マラディはニジェール共和国にあります。
 ともあれ、ちょうど国境のあたりということになります。
 カツィナの君主はナイジェリア側にも存在しますが、今回崩御したのはニジェール側の君主のようです。
 細かい情報がないので推測になりますが、もともとのカツィナのスルタンがマラディに逃れて本拠地としたのに対し、後に英仏間で植民地の境界がはっきりしたときに英国側が別の子孫をナイジェリア側に擁立したのではないかと思います。

 葬儀には、ニジェール側から政治家などの要人や伝統的君主、ナイジェリア側からの参列があったようです。

訃報(2021年5月21日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王の側近ティザ王子が薨去(?~2021)

 2021年5月21日、南アフリカ共和国のティザ王子(Prince Thiza of KwaDlamahlahla)が薨去したようです。
 故ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下の側近と報道されています。

  KwaDlamahlahla はズールーの宮殿のある場所を示していると思いますが、同地の有力者の一族なのか、いまいちわかりにくい表記です。
 ズールー王族の男系ではないのかもしれません。

 

eNCA:
Prince Thiza passed away on Friday – YouTube

 

 (英語)Prince Thiza passes away | eNCA
 (英語)Prince Thiza: Amazulu Royal Family Loses Another Senior Member as Tensions Mount Over Coronation

 

関連:
 訃報(2021年3月12日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下が崩御(1948~2021)

(旧)エチオピア帝室のエルミアス・サーレ=セラシエ皇子殿下が、キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下と会談?(2021年5月)

 エチオピア帝室評議会議長のエルミアス・サーレ=セラシエ・ハイレ=セラシエ皇子殿下(His Imperial Highness Prince Ermias Sahle-Selassie Haile-Selassie, President of the Crown Council of Ethiopia)が、キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下(ローマ法王フランシスコ台下 : His Holiness Pope Francis)と会談したというか立ち話している写真を投稿しています。

 ローマ教皇聖座側に会見の情報がないため、どういう位置付けのものだったのかはよくわかりません。

 

Ethiopian CrownさんはTwitterを使っています 「HIH Prince Ermias Sahle-Selassie Haile-Selassie, President of the Crown Council of Ethiopia, met with His Holiness Pope Francis I in Rome today. The subject of their talks has not yet been disclosed but was understood to focus on charitable activities in Ethiopia. https://t.co/RPqw58c5Vs」 / Twitter

 

Ethiopian CrownさんはTwitterを使っています 「An important update sharing more details around the recent meeting between His Imperial Highness Prince Ermias Sahle-Selassie Haile-Selassie and His Holiness Pope Francis I. https://t.co/73oAqZXXoY」 / Twitter

 

 

南アフリカ伝統的君主:モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下を選出した王室評議会に対し、将来的に女王になると大統領らから認められていた妹のマサラナボ王女殿下の弁護士が提訴の意向(2021年5月)

 南アフリカ共和国のロベドゥ人の君主であるモジャジ(Modjadji)または雨の女王(Rain Queen)に、ロベドゥ王室評議会(Royal Council)がレクケラ・モジャジ王子殿下(His Royal Highness Prince Lekukela Modjadji)を選出した件、妹で雨の女王の後継として大統領・政府らにも認められていたマサラナボ王女殿下(Her Royal Highness Princess Masalanabo)の代理人の弁護士が王室評議会の決定を無効として提訴するそうです。

 伝統やらなんやらの話はともかくとしても、大統領や政府が認めたことを一方的に否定した王室評議会の決定は、「伝統的指導権と政府の間の枠組みに関する法律」に違反しているんじゃないかと思うので、王室評議会はあっさり負ける可能性もあると思います(ロベドゥ人の伝統がどうあれ、彼らは南アフリカ共和国のルールに従う義務があるというか、従わされます)。が、王室評議会のほうも弁護士がいるようなので、伝統以外のことで何か理論武装してくるのかもしれません。

 これでようやく争いが始まるわけですが、それはそれとしてほかにも注目することがあります。
 一つ目は、シリル・ラマポーザ大統領をはじめとする政府・政権・与党政治家らが直接動くのか、とりあえず訴訟を見守るのかということ。
 二つ目として、テボホ・モジャジ=ケカナ王女(Princess Dr Tebogo Modjadji-Kekana)と称している/呼ばれている人物は結局のところモジャジとは関係があるのかないのかという割と重要な問題が一つ。今、世に出ている雨の女王に関する情報のある程度は、この人やこの人の支持者から来ているのではと思われるフシがあるので、この人が信頼できない人物だとすると、王室評議会の主張以外の伝統や歴史(割と最近まで)に関する話はどこまで信頼できるのかという疑問がわきます。
 そのほか、ネット署名でマサラナボ女王支持を訴えていた人がいます。こちらはンコサザナ・クラリス・ドラミニ=ズマ共生・伝統担当大臣らに彼ら(か彼女らかわかりませんが)の要望を提出するという予定でしたが、せんだっての王室評議会の記者会見や、それに続く王女の代理人による提訴を受けて、予定を変えるかもしれません。

 

※なお、多忙のため、この話を最後まで追えるかわかりません。英語では普通に情報が出てくると思うので、ものすごく興味がある方は直接そちらはどうぞ。

 

 (英語)Modjadji queenship dispute heads to court

 

関連:
 (インデックス)(2021年)南アフリカ伝統的君主:ロベドゥ人の君主モジャジ(雨の女王)にレクケラ王子殿下が選出された件に関する記事