サモア四大首長:故・サモア国家元首マリエトア・タヌマフィリ2世殿下の子息が“マリエトア”の即位式をおこなうも、法廷侮辱罪で訴えられ(即位式延期を要求されていた模様)またもひきずりおろされそうとのこと(2018年8月)

 2007年にサモア国家元首マリエトア・タヌマフィリ2世殿下(His Highness Malietoa Tanumafili II, O le Ao o le Mālō)が薨去した後、空位が続いている四大首長のひとつ「マリエトア(Malietoa)」の後継として、子息のパパリイ・ファアマウシリ・モリPapali’i Fa’amausili Molīパパリッイ・ファッアマウシリ・モリー)が昨年選出され、2018年8月に即位式がおこなわれたようです。

 

Samoa Observer:
Malietoa title bestowed upon Fa’amausili Moli – YouTube

 

※サモアの人名は称号などを受けてしょっちゅう表記が変わるので、「Malietoa Moli」などと書いてあってもたぶんこの方です。

 どうも選出への異論申し立てを受けて裁判所かなにかが審議をおこなっていた途中らしく、即位式の延期を求められていた模様。
 無視して強行した結果、法廷侮辱罪で訴えられ、警察へ捜査が指示されたそうで、これからどうなるのでしょう。

 なお、強行した即位式には、同じく四大首長のひとつ「トゥイマレアリイファノTuimaleali’ifanoトゥイマレアリッイファノ)」であり現在のサモア国家元首であるトゥイアアナ・トゥイマレアリイファノ・ヴァアレトア・スアラウヴィ2世殿下(His Highness Tuia’ana Tuimaleali’ifano Va’aletoa Sualauvi II, O le Ao o le Mālō : トゥイアッアナ・トゥイマレアリッイファノ・ヴァッアレトア・スアラウヴィ2世)夫妻の臨席はあったようですが、同じく四大首長のひとつ「トゥプア・タマセセ(Tupua Tamasese)」で先代のサモア国家元首であったトゥイアトゥア・トゥプア・タマセセ・エフィ殿下(His Highness Tuiatua Tupua Tamasese Efi)の臨席は報じられていません。
 同じく四大首長のひとつ「マタアファ(Mata’afa : マタッアファ)」は現在空位となっています。

 

 (英語)Malietoa title bestowed at Malie | Samoa Observer
 (英語)Criminal charges sought for Malietoa title bestowal | RNZ News
 
 

 さて、現時点までの西サモア~サモアの国家元首(オ・レ・アオ・オ・レ・マロ : O le Ao o le Mālō : オ・レ・アオ・オ・レ・マーロー)について記述しておきますと──
 まず1962年独立時点で、独立以前から特別な地位にあった、
 トゥプア・タマセセ・メアオレ殿下(His Highness Tupua Tamasese Meaʻole, O le Ao o le Mālō)、
 マリエトア・タヌマフィリ2世殿下、
 が特別な規定により両者とも終身の共同国家元首となります(どちらも四大首長)。
 前者はわりと早く薨去し、その後マリエトア・タヌマフィリ2世殿下が単独の終身国家元首となり、2007年に薨去。
 そして、トゥイアトゥア・トゥプア・タマセセ・エフィ殿下とトゥイアアナ・トゥイマレアリイファノ・ヴァアレトア・スアラウヴィ2世殿下が短期間国家元首代行を務めますが(どちらも四大首長)、前者のトゥイアトゥア・トゥプア・タマセセ・エフィ殿下が正式に国家元首に選出されます(対抗馬なし)。任期は5年。
 任期終了の2012年にも選出会議がおこなわれ、このときも対抗馬なしで選出されている、と思います
 次の任期終了である2017年には、トゥイアトゥア・トゥプア・タマセセ・エフィ殿下と、ともに短期間国家元首代行を務めていたトゥイアアナ・トゥイマレアリイファノ・ヴァアレトア・スアラウヴィ2世殿下の間で選挙がおこなわれ後者が就任しました。
 また、2017年11月には、(通算で)2期10年を上限とするという憲法改正がおこなわれる見込みと報じられましたが、1期10年で終わりと取れるような書き方をしているところもあり、改正されたかどうかも含めて詳細は不明です。
 いずれにせよサモアの事実上の唯一政党「人権推進党(Human Rights Protection Party : HRPP)」は、国家元首の就任資格が事実上四大首長(ルール上、下位首長を含む)に絞られていることに対して批判的とされており、また、トゥイラエパ首相は口ではいかにも国家元首の地位を尊重しているようなことをいいますが与党を掌握している人物であり、冷淡にいってしまえば国家元首や四大首長を尊重しているわけがない(自分は首相を20年務めている)ので、サモアの国家元首の地位はこれからどうなるかわかりません。

 

 また、今回、即位式を強行したパパリイ・ファアマウシリ・モリですが、上記の動きとは別に、有罪になれば国家元首就任の資格を失うことになるかもしれません。

 

続報:
 サモア四大首長:裁判所の延期命令を無視して新たな“マリエトア”の即位式を強行した当人と20人以上の首長が警察に告発される(2018年9月)

 

フィジー伝統的首長:即位した新しいランバサ首長に対抗して首長の座を要求する二勢力(2018年9月)

 フィジー共和国の伝統的首長位のひとつランバサ首長(Tui Labasa)に、“ラートゥー”・ジョーン・クォマテ(Ratu Jone Qomate)が8月末に即位した件について、その記事に少し追記したのですが、ドラウナ家(Drauna family)というところが、自分たちの家こそがランバサ首長になる権利があると(おそらく代替わりごとに毎回いってそうなのですが)要求しているそうです。
 これを、マキュアータ首長“ラートゥー”・ウィリアム・カトニヴェレ(Tui Macuata Ratu Wiliame Katonivere)が否定して、それで話はおしまいと思っていたのですが……。

 

 (英語)The Fiji Times » Traditional kingmakers to challenge installation of Tui Labasa

 

 あらたに対抗勢力が出現。
 こちらの代表者というかスポークスパーソンと書かれている“ラートゥー”・ペニ・タロガ・ライキソ(Ratu Peni Taloga Raiqiso)が、即位式において正式な手順が踏まれていないと主張しています(彼らが即位式で果たすべき役割が果たされていないということらしいですが……)。
 また、首長の位とあわせて、どちらも放棄するつもりはないとのこと。

 

 末尾に「続きは明日の紙媒体か e-Editionで」みたいなことが書いてありますが、紙媒体はともかく、e-Editionは右側のリンクからたどってみることができます(検索には「Tui Labasa Jone」とかそういったあたりを入れてみれば9月5日の版に出てくると思います)。

 それによりますと、上記の“ラートゥー”・ペニが主に批判しているのは新たに即位したランバサ首長ではなく、それを取り計らったらしいマキュアータ首長のほうらしいです。マキュアータ首長は政党「FijiFirst」(フィジーファースト : フィジー第一党)の副党首でもあるようで、この党に関しては、伝統層から反発も出ているという話もあります。

 また、マキュアータ首長のほうは、彼の先祖のマキュアータ首長“ラートゥー”・ライオ・カトニヴェレ(Tui Macuata Ratu Raio Katonivere)が三代前のランバサ首長(即位した新首長の伯父で上院議員を務めていたらしい)“ラートゥー”・テヴィタ・クォマテ(Ratu Tevita Qomate)の即位を主導したと前例を出し、マキュアータ首長がランバサ首長を即位させるのが当たり前なのだといわんばかりの見解を示していますが、どちらのいうことが正しいのかはさっぱりわかりませんが……。

 いっぽう、なんの組織かわかりませんが、「Native Land Commission」という役所のお偉方らしい“ラートゥー”・ヴェシクラ・ヴァナナラギ(Ratu Vesikura Vananalagi)という人は、“ラートゥー”・ペニからの訴状が届くまではコメントすることはないとのこと。
 また、一番上に書いたドラウナ家にも、提訴が可能だと助言したそうです。

※なお、別名なのか他の組織なのかわかりませんが、他社の短文記事では別の組織名が登場しています。漁業関係にしか思えない組織名もありますが……。

 

フィジー伝統的首長:ランバサ首長にジョーン・クォマテが即位(2018年8月)

 2018年8月31日、フィジー共和国の伝統的首長位のひとつランバサ首長(Tui Labasa)に、“ラートゥー”・ジョーン・クォマテ(Ratu Jone Qomate)が即位したようです。

※全般的に人名のカタカナ表記など、かなり適当ですのでご注意ください。

 

 (英語)The Fiji Times » Ratu Jone installed new Tui Labasa

The Fiji Timesさんのツイート: "The vanua o Labasa braved the hot sun that seemed to burn in all its glory today as they sat in silence to witness the installation of their new chief and #TuiLabasa Ratu Jone Qomate. #TimesNews #FijiNews https://t.co/T0b0znOP1y"

The vanua o Labasa braved the hot sun… – Fiji Times Online | Facebook

 

 (英語)Ratu Jone Takes The Reins | Fiji Sun
 (英語)Ratu Wiliame: Chiefs Have Unifying Role | Fiji Sun

 

 一つ目の記事の写真(TwitterおよびFacebookにも掲載)は、伝統的な儀式がおこなわれているような情景です。
 こちらの記事では、マキュアータ首長“ラートゥー”・ウィリアム・カトニヴェレ(Tui Macuata Ratu Wiliame Katonivere)が臨席したと報じられています。
 フィジーの伝統的首長は70人ほどいるようですが、14の管轄区にわかれており、ランバサ首長はマキュアータ管轄区に属します。
 マキュアータ首長が上級の権限を保有しているのかどうかはわかりませんが、管轄区と同名の首長なので、席次としては上なのでしょう。
 また、マキュアータ首長は政党「FijiFirst」(フィジーファースト : フィジー第一党)の副党首でもあるようです。

 

 二つ目の記事では、フィジー共和国の最大宗派であるキリスト教のメソディスト(メソジスト)の牧師らの参列する儀式がおこなわれたことがうかがわれます。

追記1:
 三つ目の記事を追加しました。
 写真および内容、一つ目の記事とほぼ同じですが、マキュアータ首長の権限(というかなんというか)が少しほのめかされています。

 

追記2:
 2016年11月に先代の首長である おば の“アンジー”・サラニエタ・トゥイロマロマ・クォマテ・リトヴァ(Adi Salanieta Tuilomaloma Qomate Ritova)が薨去していたようです。
 また、父の“ラートゥー”・ジョエリー・クォマテ(Ratu Joeli Qomate)が1997年~2004年に首長であり、その前は伯父で上院議員を務めていたらしい“ラートゥー”・テヴィタ・クォマテ(Ratu Tevita Qomate)が首長の座にあったようです。
 と、これだけ聞くと、さも地位を継承しそうですが、二つ目の記事中の、妻エレノア・ヴァカロロマElenoa Vakaloloma)は、信じられないと興奮しているようで、親戚が多いんでしょうか。

 

追記3:

 (英語)FBC News | No controversy over installation of Tui Labasa

FBC News – No controversy over installation of Tui Labasa… | Facebook

 こちらの記事によりますと、ドラウナ家(Drauna family)というところが、自分たちこそがランバサ首長になる権利があると(毎回)要求しているそうです。
 が、マキュアータ首長は明確にこの要求を否定しています。

 ちなみに、記事中写真のキャプションに“ラートゥー”・ジョージ・クォマテ(Ratu Joji Qomate)という名前があります。明らかに一族ですが、首長の兄弟とかでしょうか。

 

追記4:

 (英語)FBC News | Tui Labasa calls for review on how funerals are carried out

FBC News – Tui Labasa calls for review on how funerals are… | Facebook

 また、この記事によりますと、新首長は、現代生活では、家庭での葬礼の費用の負担が重くなっているということで、簡素化を含めた検討をする意向のようです。
 要するに、どこの国にもある、現代化に伴う「なんで葬式にこんな大金かけないといけないんだ」という話ですが、伝統的首長が議論をリードする意思を示す、というのが伝統が残っていることを感じさせます。

 

(もう独立してませんが)ハワイ王国独立175周年・カメハメハ3世の新しい彫像除幕式にオルレアン派フランス王室長女/リヒテンシュタイン公子妃マリー殿下と娘の公女マルガレーテ殿下が参列。ハワイ王室当主(とされる一人)のハワイ王女オワナ・サラザール殿下の招待(2018年7月)

 2018年7月31日、アメリカ合衆国ハワイ州で、ハワイ王カメハメハ3世の新しい彫像の除幕式がおこなわれました。
 また、ハワイ王国独立175周年を祝う意味もあるようです。

※ハワイ王国の独立ですが、175周年ということは、1843年に独立したということであり、その2月に英国人によるハワイ完全接収方針(?)があり、7月31日にそれが退けられ、11月28日に英語で「Anglo-Franco proclamation(英仏宣言?)」と呼ばれる英国政府とフランス政府によるハワイ独立承認があったようです(詳細は調べていませんが)。
 しかし完全な英国領になってたら、現在時点で独立国家になってたような気もします。

 この式典ですが、現在ハワイ王室当主の一人とされるハワイ王女オワナ・サラザール殿下(Her Roya Highness Princess Owana Salazar of Hawaii)の招待により、オルレアン派フランス王室の長女であるリヒテンシュタイン公子妃マリー殿下(オルレアン公女 : フランス王女 : Her Royal Highness Princess Marie of Liechtenstein, Princess of Orléans, Princess of France)と娘の一人のリヒテンシュタイン公女マルガレーテ殿下(Her Serene Highness Princess Margarete of Liechtenstein)が参列したようです。
※マリー妃殿下は、リヒテンシュタイン公子グンダカル殿下と結婚しています。

 今回、オワナ・サラザール殿下がオルレアンを招待したのは、1843年当時が七月王政だからなのかもしれないと思いますが、下記公式サイトには、フランスのフの字もオルレアンのオの字も、招待した話も名前の表記もありません。

 また、殿下の兄弟としてラアヌイLaanui)とカラニKalani)という名前が(オルレアニストのブログの)記事に見えます。
 この名前を一部に持つ兄弟がいるという情報があるのでその二人でしょうか。

 

 (英語:ハワイ王室【ケオウア・ヌイ家】公式サイト:写真あり)Royal Family of Hawaii Official Website | Unveiling the new statue of King Kamehameha III at Thomas Square Park | July 31, 2018

 (URL移転により記事の掲載が終了しています)(フランス語:フランスのオルレアニストのブログ)La Princesse Marie de France aux 175 ans de la restauration de la Monarchie à Hawaï – Le blog de La Couronne
掲載時URL:http://www.la-couronne.org/actualite-royale/la-princesse-marie-de-france-aux-175-ans-de-la-restauration-de-la-monarchie-a-hawai/

 

中央の女性がオワナ・サラザール殿下、向かって右端がマリー妃殿下母娘:
URL移転により記事の掲載が終了し、関係あるかわかりませんが写真も表示されなくなっています)
La Couronneさんのツイート: "La Princesse Marie de France aux 175 ans de la restauration de la Monarchie à Hawaï https://t.co/JQzUt0Nlc4"

 

オワナ・サラザール殿下関連記事:
 インタビュー動画(英語、字幕はポルトガル語):ハワイ王女オワナ・サラザール殿下へのインタビュー動画(2017年3月)

 

英国のチャールズ皇太子殿下が、バヌアツ共和国部族首長会議より部族首長の称号を受ける(2018年4月)

 バヌアツ共和国を訪問した英国【イギリス】のウェールズ公チャールズ皇太子殿下(Prince Charles : His Royal Highness The Prince of Wales)は、同国行政府の諮問機関(?)である部族首長会議(Malvatumauri : Malvatu Mauri : Mal Vatu Mauri)より部族首長の称号を受けたようです。

 BBC記事からは、「Mal Menaringmanu」となっているのですが、Mal は 部族首長のことだと思うので、「Mal Menaringmanu という名称の部族首長の称号」か「Menaringmanu という名で呼ばれる部族首長」のどちらかだと思います。

 

The Royal Family Channel:
Prince Charles made an honourary high chief in Vanuatu – YouTube

 

 (英語)Prince Charles gets new Chief title on Vanuatu – BBC News

 

関連:
 フィリップ王子信仰運動のバヌアツ共和国タンナ島で、神=薨去した英国王室/エディンバラ公爵フィリップ王子殿下への(小規模な)セレモニーがおこなわれる(2021年4月)次の神はチャールズ皇太子殿下が有力だが決まっていない模様