2022年10月3日、秋篠宮皇嗣殿下(文仁親王 : ふみひと : Prince Fumihito : His Imperial Highness Crown Prince Akishino)及び秋篠宮皇嗣妃殿下(紀子 : きこ : Kiko : Her Imperial Highness Crown Princess Akishino)、佳子内親王殿下(かこ : Her Imperial Highness Princess Kako of Akishino)、悠仁親王殿下(ひさひと : His Imperial Highness Prince Hisahito of Akishino)は、安倍(元)総理国葬などのために日本を訪問中の、
ブータン王室のソナム・デチェン・ワンチュク王女殿下(Her Royal Highness Princess Sonam Dechan Wangchuck)および、
王女殿下の長男のジグジェ・シンゲ殿下(His Serene Highness Jigje Singye)、
次男の「大訳経法師ヴァイローツァナの化身ラマ」“リンポチェ”・ジグミ・ジッテン猊下(His Eminence【His Holiness】 Tulku Vairotsana【Vairochana】 Rinpoche Jigme Jigten)と会見しました。
日テレNEWS:
【懇談】秋篠宮ご一家 ブータンのソナム王女と王子に面会 – YouTube
3日午後、ソナム王女は2人の王子とともに秋篠宮邸を訪れ、秋篠宮ご一家が出迎え、挨拶をされました。秋篠宮ご夫妻と悠仁さまは、2019年にブータンを私的に旅行した際に王女と会われていますが、王子とは初めてだということです。
Nippon TV News 24 Japan:
Crown Prince Fumihito meets Bhutan princess – YouTube
秋篠宮ご一家 訪日中のブータン ソナム王女と2人の王子に面会 | NHK | 皇室
秋篠宮ご一家 ブータン王女らと面会 | TBS NEWS DIG (1ページ)
TBS NEWS DIG よりキャプチャ:
ご一家が面会されたのはブータン国王の妹のソナム・デチェン・ワンチュク王女と、息子の王子、ヴェロチャナ・リンポチェ・ワンチュク殿下、ジグジェ・シンゲ・ワンチュク殿下です。
NHK や日テレNEWSは「王子」を見出しにも使い、 TBS NEWS DIG は「王子」「殿下」まで使用していますが……。
「王子」は、おそらくですが、誤りではないかと思います。
※それはともかくとして、「TBS NEWS DIG」は、日本の皇族に「さま」、ソナム王女に殿下の敬称なし、王女の息子に「殿下」をつける、という謎の文面になっています。
王女の二人の子息は「王子」ではないのではないかと言いましたので、ブータンの称号と敬称に関して説明しますと……実はよくわかりません!
なので、ここからの長い文章は話半分で読んでいただけると助かります。
ブータンには男性には Dasho(ダショー) とアシ Ashi(アシ)という称号なのか敬称なのかよくわからないものがあります。
これを王族称号、すなわち王子・王女だとしているケースがありますが、貴族なども使用するものであり、国王から叙されればその他の個人も保有します。
現在の首相も Dasho を所有しており、
(英語:ブータン政府サイト)Prime Minister – GOV.BT
Dasho Dr. Lotay Tshering
Prime Minister
他にも、多数の所有者がいます(なお勝手に使用しているケースも多々あるようでますますよくわからない状況です)。
しかしややこしいことに、王の子供に関しては Dasho や Ashi は(日本語でいう)王子や王女を含意するとしている資料もあります(本当かどうか不明)。
ブータンは王室公式サイトがないので、公式情報といえるのは、国王陛下の Facebook での表記になるかと思います。
(英語:ブータン王 公式Facebookアカウント)His Majesty King Jigme Khesar Namgyel Wangchuck | Facebook
ですが、そもそもゾンカ語(ブータンの言語)を英語に訳す時点で正確さは失われているはずなので、そこもまた考慮しなければいけません。
(ここからはこの文章を書いている当方の目測?のようなものなので、興味のある方はご自身で調査をお願いします)
同 Facebook では、当初(王子や王女に) Dasho や Ashi が使われているケースが多かったのですが、やがて His/Her Royal Highness (殿下)とセットになっていきます。
そして「Prince Dasho」「Princess Ashi」と英語の王子・王女表記と Dasho/Ashi を併記する書き方になり、現在は His/Her Royal Highness (殿下)と Prince/ss(王子・王女)のみを使用しています。
つまり、 Dasho と Ashi は使用していません。もちろん Dasho や Ashi ではあるのでしょうが、王の子供の Dasho や Ashi に王子や王女の含意があるとすると Prince や Princess にその意味が含まれているので書く必要はないとも言えます(そう判断しているのかどうかはわかりませんが)。
また、現国王の子息に関して「Gyalsey」という表記がなされるため、これは「Prince」より上位の王子ではないかとも思われます。
ここまでが一般的な話なのですが、では王女の二人の子息はどうなのか。
同 Facebook では、男系・女系を問わず、国王の甥や姪(先代国王の孫)に、Prince や Princess はもちろんのこと Dasho や Ashi が使用されていません。のみならず、男系の姪の一人を除き名前に「ワンチュク」が含まれる表記をされているケースもありません(ただし、名前を短く書いているケースが多いのは間違いないのでワンチュクであるかもしれません)。
また、敬称は「His/Her Serene Highness : HSH」が使用されています。
これは上記の「Royal Highness」よりランクの低い敬称ですが、王族近親であることを考えれば、日本語で「殿下」とするのは正しいことでしょう。
よって、殿下ではあるが、王子や王女とする理由は特にない、ということになります。
王女の長男のジグジェ・シンゲ殿下についてはここで話が終わりますが次男のジグミ・ジッテン猊下に関してはもう少し説明が必要になります。
猊下は、同国のチベット仏教最高指導者第70代ジェ・ケンポのジグミ・チェダ猊下より、大訳経法師ヴァイローツァナの化身ラマとして認定を受けています。
上記記事掲載の写真を見ても、小さい方の子供は仏教の僧侶風の装束であることはわかるかと思います。
よって、宗教の高位聖職者になりますので、(海外の)報道では宗教の高位聖職者としての称号と敬称が使用されています。
それが王室の公式表記ということになるのかどうかは不明ですが……。
また、日本では明治維新後には、仏教の高位聖職者と皇族を兼ねていることがないので、日本側の慣習として「このような場合は~とする」という例がありません。
TBS NEWS DIG は猊下の表記を「ヴェロチャナ・リンポチェ・ワンチュク殿下」としていますが、ヴェロチャナはヴァイローツァナのことであり(当方にはブータンでの発音はわかりませんが)殿下本人の名前ではなく、過去の高僧の名前です。リンポチェは高僧への尊称のためこれもまた本人の名前ではありません。当方の考えではここは(使うならば)「猊下」を使用するべきです。
追記:
王子ではありませんが、(王女を含め)ブータン王位継承順位には並んでいます。
ジグミ猊下(9歳)はチベット仏教の高僧なので生涯独身が決定しています。
追記2:
ソナム・デチェン・ワンチュク王女殿下の来日の目的の一つ、ブループラネット賞の授賞式にて、父である前王の名代として授賞。
授賞式には、秋篠宮皇嗣殿下らが臨席。
秋篠宮ご夫妻 「ブループラネット賞」表彰式に出席 | NHK | 皇室
TBS NEWS DIG Powered by JNN:
秋篠宮ご夫妻 地球環境に寄与する国際賞「ブループラネット賞」表彰式に出席|TBS NEWS DIG – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ftrnsKTiaRg
ブループラネット賞:
2022(31st)His Majesty Jigme Singye Wangchuck, the Fourth King of Bhutan – YouTube
(英語)His Majesty the Fourth King awarded Blue Planet Prize | Kuensel Online