南アフリカ伝統的君主:ムポンド人の王位に関して、最高上訴裁判所が(5月に崩御し、6月に第一級公葬がおこなわれた)ザノズコ・シカウ陛下の王位を無効と判断(2022年9月)

 2022年9月14日、南アフリカ共和国の最高上訴裁判所は、故ザノズコ・シカウ陛下(Kumkani Zanozuko Sigcau)がムポンド人の王であると、大統領や CTLDC が承認したのは誤りだとする、ウェジズウェ・シカウ王女(Wezizwe Sigcau)らの訴えを認めました(報道などでの王女の名前と判決文の名前 Wenzile Feziwe Sigcau が異なっていますが詳細不明)。
 これにより、2018年の憲法裁判所の承認によりザノズコ・シカウ陛下を王と認めた決定は無効となりました。

 

Supreme Court of Appeal ZAさんはTwitterを使っています: 「Media Summary: Wenzile Feziwe Sigcau & Another v The President of the Republic of South Africa, the Commission on Traditional Leadership & Others (Case no 961/2020) [2022] ZASCA 121 (14 September 2022) The SCA today upheld an appeal against an order by the Gauteng Division. https://t.co/8nqZBPIXno」 / Twitter

 

 なお、故ザノズコ・シカウ陛下は(とりあえず陛下表記を続けますが)、5月31日に崩御し、南アフリカ共和国大統領マタメーラ・シリル・ラマポーザ閣下(Matamela Cyril Ramaphosa)が弔意を表明・第一級公葬(Official Funeral Category One)もおこなわれました。
 その後、摂政や次期王位に関する議論も出ていたところでこの判決、となり、正直もうなにがなにやら……。

 判決は、訴えを起こしていた王女の父・故ムポンドンビニ・シカウMpondombini Sigcau)を正統な王と認めています。この前提で次の王(or女王?)を決めなさいということでしょうが……。

 王女は自らが女王となるつもりでしょうが、判決文がそこまで踏み込んだものかどうかは……そもそもこの王女の きょうだい とかはいるのかいないのか、いても何人いるのか、などまったくわかりません。

 また、どうなるにせよその決定に時間がかかり、かつ決定された後に裁判になるのも目に見えているので、この件に限らず、南アフリカ共和国は伝統的君主に関する制度設計に壮大に失敗してしまった感がありありとします。

 

大統領から陛下への弔意:
 (英語:南アフリカ共和国 政府 公式サイト)King Zanozuko Tyelovuyo Sigcau | South African Government

 

葬儀の様子(5時間以上)/
SABC News:
Official Funeral Category One of AmaMpondo King Zanozuko Sigcau – YouTube

結婚(2021年5月6日):南アフリカ伝統的君主/ズールー王に指名されたミスズールー王子殿下が、指名(母・摂政マントフォンビ陛下の葬儀の日に遺書で)の前日に結婚(民事婚)していた模様。「結婚していないので王になる資格はない」との批判をかわすためか

 母であるズールー王国摂政(王妃)マントフォンビ・ドラミニ陛下(Her Majesty Queen Regent Mantfombi Dlamini)の遺書でズールー王に指名されたミスズールー・ズールー王子殿下(His Royal Highness Prince Misuzulu Zulu)、あるいはすでにズールー王ミスズールー・シンコビレ・カズウェリティニ陛下(His Majesty King Misuzulu Sinqobile kaZwelithini of Zulu)と呼んだ方がいいのかもしれませんが、ともあれ摂政の葬儀=指名の日の前日に、ントコゾ・マイイセラNtokozo Mayisela)という女性と結婚(民事婚)していたことがわかりました。

 二人の間には、9歳と3歳の王子がすでに誕生しているようです。

 

 さて、この駆け込みでの結婚は、「結婚していないので王になる資格はない」という批判をかわすためか、と思われているようです。

 そうかもしれませんが、しかしここでいくつか疑問が出ます。

 まず、「結婚していないとダメ」という批判は、ズールー王国の伝統から来るものであるはずであり、であれば(南アフリカ共和国の民事婚ではなく)ズールー王国の伝統的な結婚式をおこなわなければ条件を満たさないのではないか、ということです。

 二つ目は、そもそもそんな条件が本当にあるのか、ということです。2021年3月12日に崩御した南アフリカ共和国の伝統的君主/ズールー王グッドウィル・ズウェリティニ陛下(His Majesty King Goodwill Zwelithini of Zulu)の後継候補としては、ミスズールー王子のほかは、第一夫人との間の子息で2020年11月に薨去したレツクツラ・ズールー王子殿下(His Royal Highness Prince Lethukuthula Zuluが挙げられ、レツクツラ殿下も結婚しているという話は出ていません。
 「結婚していないと王になれない」のに、王の後継候補二人が揃いも揃って中年~初老にもなって結婚していないということがあるのかと。

 

 ともあれ、ミスズールー陛下はさらに他に二子を儲けているようで、そのうちの一人の母親である、ムポンド人の王族であるウェジズウェ・シカウ王女(Princess Wezizwe Sigcau)と戴冠式の前に結婚するという予測があるようです。

※なお、ムポンド人の王位を争っていた人物の中にウェジズウェ・シカウWezizwe Sigcau)の名があり、こちらも王女でしょうが、別人……なんでしょう。同一人物ならさすがに記事内で言及されると思います。
関連:
 南アフリカ伝統的君主:憲法裁判所がCTLDCの判断を支持。政府はムポンド人の王をザノズコ陛下だと認める手続きを開始(2018年10月)

 他の王室出身者であるウェジズウェ王女には、結婚後に Great Wife と呼ばれる資格があり、二人の子供であるジュベジズウェニ・シカウ=ズールー王子(Prince Jubezizweni Sigcau-Zulu)をすでに将来のズールー王と見る向きもあるようです。

 

 余談ですが、行政の文書からミスズールー陛下の子供の割り出しをおこなっている人物もいるようで、南アフリカ共和国では個人情報の保護があまりされていないのではないかと思われます。

 

 (英語)Documents show new Zulu King Misuzulu got married last week
 (英語)PIC: MEET ZULU KING'S NEW MAKOTI
 (英語)King Misuzulu kaZwelithini has a bride – reports

結婚(2021年5月):南アフリカ伝統的君主/ムポンドミセ人の王 ルズコ・マティワネ 陛下が、第二夫人としてシヨンワベレ・ランガ王女(ムポンド王の一族?)と結婚

 南アフリカ共和国の伝統的君主の一人、ムポンドミセ人の王ルズコ・マティワネ陛下(Luzuko Matiwane, The King of AmaMpondomise)が、第二夫人としてシヨンワベレ・ランガ王女(Princess Siyonwabele Langa)と結婚したようです。

 同王は、(だいぶ前に確認した限りですが)南アフリカ共和国の「伝統的指導権に関する議論と主張を扱う委員会(CTLDC)」の承認を受けていなかったと思います。
 現在の状況は不明。

 同王女はムポンド王の一族という情報もありますが、ムポンド王というだけではどの王かわからないので、こちらも詳細は不明です。が、他の王族出身なので Great Wife の称号で言及されることになるでしょう。
 また、王との子供を懐妊しているようで、息子であれば王の継嗣となる可能性が高いです。

 ムポンドミセ人とムポンド人は非常に近いようで、先祖が双子という伝承もあるようです。

 

SABC News:
AmaMpondomise King Luzuko Matiwane marries a second wife – YouTube

 

 (英語)AmaMpondomise King Matiwane takes second wife, Princess Langa – SABC News – Breaking news, special reports, world, business, sport coverage of all South African current events. Africa's news leader.

戴冠式(2018年10月3日):南アフリカ伝統的君主/ムポンド人のニャンデニ王マンガリソ・ンドロヴイェズウェ・ンダマセ陛下が戴冠

 2018年10月3日、ムポンド人のニャンデニ王マンガリソ・ンドロヴイェズウェ・ンダマセ陛下(King of AmaMpondo aseNyandeni Mangaliso Ndlovuyezwe Ndamase)の戴冠式が、リボデのニャンデニ大宮殿でおこなわれたようです。

 

 (英語)King Ndamase vows to develop nation | IOL News

 

 戴冠式より少し前、南アフリカ共和国憲法裁判所がCTLDCの判断を支持したので、政府がムポンド人の王をザノズコ陛下だと認める手続きを開始しましたが、2010年に南アフリカ共和国は、このザノズコ・シカウ陛下(Kumkani Zanozuko Sigcau)が争っていた位をポンド人全体の王だと認めています。

 一方、ムポンド人は地域別に二人の王がいたという話があり、それぞれムキケラ系統(Mqikela)=カウケニ王統(aseQawukeni)とンダマセ系統(Ndamase)=ニャンデニ王統(aseNyandeni)となっていたようです。なぜかよくわかりませんが、南アフリカ共和国は2010年に前者(つまりザノズコ・シカウ陛下のほうの位)をポンド人全体の王と認めたようです(他でも同じように一人を選んでいるケースがあります)。
 今回の記事からすると、そもそも二王は領域が異なっているので、同じ地位を争っていたわけでもなさそうです(未確認ですが、主導権争いのようなものはあったのかもしれません)。
 当然のことながら、ニャンデニの地域からは反発が続いています。

 戴冠式にはザノズコ・シカウ陛下は姿を見せていないようですが、これは以上の事柄を踏まえれば、来てくれても困る状況でしょう。

 

 戴冠したマンガリソ・ンドロヴイェズウェ・ンダマセ陛下は、地域の経済発展と失業率の改善、観光業の強化を訴えたようです(いずこも同じといいますか……)。

 

南アフリカ伝統的君主:憲法裁判所がCTLDCの判断を支持。政府はムポンド人の王をザノズコ陛下だと認める手続きを開始(2018年10月)

 南アフリカ共和国の憲法裁判所は、CTLDC(Commission on Traditional Leadership Disputes and Claims :
伝統的指導権に関する議論と主張を扱う委員会)による、ザノズコ・シカウ陛下(Kumkani Zanozuko Sigcau)をムポンド人(Mpond people : AmaMpondo : Pondo)の王と判断する決定を支持するとしたようです。

 

 (英語)Govt begins process of recognising AmaMpondo king | News24
 (英語)Government begins process of Recognising King of Amampondo – EIN News
 (英語)Kumkani Zanozuko Tyelovuyo Sigcau to be recognised as rightful King of the AmaMpondo

 

 政府はすでに承認手続きを開始した模様。

 同王位は、1937年のマンドロンケ王(King Mandlonke)の崩御以降、争いが続いており、(当時)南アフリカ共和国大統領ジェイコブ・ズマ閣下(His Excellency Jacob Zuma)が2010年にザノズコ陛下を王と認めた後も憲法裁判所から異論が出されたりしていました。
 “対立王”であったムポンドンビニ・シカウMpondombini Sigcau)の死後、その娘のウェジズウェ・シカウWezizwe Sigcau)が主張を引き継いでいた模様。最高裁判所で敗訴したのちに、憲法裁判所に上訴していたようですが、憲法裁判所はザノズコ陛下を王と認めました。

※なお、在位年代が不明ですが、ムポンドンビニ・シカウに関しては、歴代の王として扱われている場合もあり、ザノズコ陛下の前に単独の王位主張者であったのかもしれません。

 

続報/
 最高上訴裁判所は判断を取り消す:
 南アフリカ伝統的君主:ムポンド人の王位に関して、最高裁判所が(5月に崩御し、6月に第一級公葬がおこなわれた)ザノズコ・シカウ陛下の王位を無効と判断(2022年9月)

 

関連:
 戴冠式(2018年10月3日):南アフリカ伝統的君主/ムポンド人のニャンデニ王マンガリソ・ンドロヴイェズウェ・ンダマセ陛下が戴冠